「猛暑が続き、熱中症にならないか心配」
「熱中症にならないために、何かできることはないかな」

「熱中症」という言葉は、夏場になるとさまざまな場面で聞く言葉ですよね。
今回の記事では、高齢者が熱中症にならずに夏を過ごすための知識・対策をご紹介します。

熱中症とは

「熱中症で緊急搬送されました」というニュースを聞いたことはありませんか?
まずは、熱中症の症状や、熱中症に気をつけるべき時期について説明します。

熱中症の緊急搬送の現状

夏場(6月から9月)は、熱中症による救急搬送が後を絶ちません。令和2年の夏場の救急搬送された累計人数は、約65000人でした。8月が最も多く43000人と全体の66%を占めています。9月になると落ち着きますが、8月・9月は注意が必要であると覚えておきましょう。(1)

熱中症の主な症状

熱中症は、高温多湿な環境下で体内の水分と塩分のバランスが崩れ、体温調節などの重要な機能が正しく働かなくなることにより起こります。主な症状として、めまい、頭痛、大量の発汗、吐き気、意識障害などがあります。(2)

熱中症の3段階の症状と高齢者の熱中症の現状

熱中症の緊急搬送の現状や主な症状について知ってもらいました。熱中症は高齢者で特に注意が必要とされています。なぜ高齢者に注意が必要なのかを説明します。

熱中症の3段階の症状分類

熱中症の症状は軽度(Ⅰ度)、中等度(Ⅱ度)、重症(Ⅲ度)に分類されます。
軽度(Ⅰ度)であれば、その場での応急処置で対応ができます。中等度(Ⅱ度)以上は、病院への搬送が必要になります。重症度が上がるほど生命の危険も増えるので、早めの対策を心がけたいですね。

(引用:熱中症診療ガイドライン2015/日本救急医学会p.7図)

高齢者は特に注意が必要と言われる3つの理由

高齢者は特に注意が必要とされています。その理由について、3つにまとめました。
1つずつ理解を深めましょう。

①暑さに対する感覚機能が低下している
皮膚の温度センサーが鈍くなり、体温調節機能が上手く働かなくなります。暑さを感じづらくなってしまうため、身体に熱がたまり、体温の上昇、熱中症の発生に繋がります。

②暑さに対する身体の調節機能が低下している
発汗量と皮膚血流量が増加すると、熱を放散して体温の調節をしています。しかし、老化により発汗量、皮膚血流量の低下が起こり、熱を放散しづらくなります。そのため、高齢者は熱がたまりやすく、身体への負荷も大きくなります。

③体内の水分量が少なく、不足しやすい
体内の水分量は成人が60%、高齢者は50%とされています。成人よりも筋肉量が低下することが一因とされています。さらに、老化にともない腎臓の働きが悪くなると、水分の再吸収量が少なくなります。その結果、体内の水分量が少なくなります。(3)

熱中症の予防法や対策

熱中症の症状や、特に高齢者が熱中症に気をつけるべき理由について知ってもらいました。
次は、熱中症にならないための予防法や対策について説明します。

熱中症予防チェックリスト10項目

熱中症の予防法のチェックリストが厚生労働省、環境省から発行されています。
予防法ができているか、1項目ずつ高齢者と一緒にチェックしてみましょう。

(引用:高齢者のための熱中症対策/環境省p.2)

おすすめな4つの熱中症対策

先程のチェックリストはいかがでしたか?ここでは、特に意識して欲しい熱中症対策を4つ紹介します。また、厚生省発行のリーフレットも参考にしてみてください。

(引用:厚労省_熱中症対策リーフレット_表yellow_210621)

①空調対策
室温が高いと熱中症になりやすいので、エアコンの活用をおすすめします。ただ、エアコンは室内の空気を循環させるだけなので、エアコンを使用しながらこまめに換気をするようにしましょう。また、風が直接当たることで身体の冷えから体調不調になってしまうケースもあります。そのため、エアコンの風が直接当たらないように風向を調節してください。

エアコンの上手な使用方法については、環境省が作成している動画にて紹介されています。気になる方は、ぜひご確認くださいね。

(引用:高齢者のための熱中症対策/環境省p.1)

②暑さを避ける
暑さを避けるために屋内にすぐ入れない時は日陰に移動しましょう。日傘や団扇などのアイテムを活用し、直射日光や暑さを避けるような工夫をしてみましょう。

③水分補給
のどが渇いていなくても、こまめに水分補給をしましょう。1日1.2Lが目安ですが、高齢者は水分不足に気づきにくいです。そのため、ご家族の方から水分補給を促してあげてください。また、1時間毎にコップ1杯の水分補給をする習慣をつけるのもおすすめです。

④体調管理
暑さに備えた身体づくりと体調管理が大切です。日頃から無理のない範囲で30分くらいの運動を取り入れましょう。また、運動により筋肉が増えると、体内の水分量も増加します。ただ、体調が優れないときは無理をせず安静に過ごしましょう。

判断や応急処置

熱中症やその対策について、知っていただけたでしょうか?
熱中症の判断や応急処置についても把握し、いざというときの対応方法を知ることも大切です。

判断基準について

ご本人が体調や調子が「おかしいな」と感じているようでしたら注意してあげてください。
汗をかいていなくて身体が熱い、ズキンズキンとする頭痛、吐き気、ふらつき、めまい、意識障害があると重症の場合が多いです。少しでも異変を感じたら、周囲へ助けを求めてください。

応急処置

応急処置の方法は3つあります。

①なるべく涼しい環境に移動する
屋外であれば、涼しい屋内に移動しましょう。屋内へ入れないときは、日陰を探しましょう。

②体温を下げる
衣服を脱がせて、こもっている熱を外に出しましょう。冷たいものがあれば活用し、体温を下げましょう。団扇や扇風機も効果的です。

③水分補給・塩分補給
冷たい水やスポーツドリンク、経口補水液を飲みましょう。ただし、意識障害があると気道に水分が流れ込む可能性があります。また、嘔吐症状が既にある場合は口から水分を入れることは避けましょう。

熱中症の疑いがあり、意識障害や水分が摂れない場合は救急車を呼びましょう。
また、応急処置を行っても状態が改善されない場合も医療機関に行きましょう。
早期発見・早期対応が命を救うことになります。自分や周りの大切な人のためにもいざという時に動けるようになれたらいですね。(2)

まとめ

熱中症に対する予防や対策の必要性について、お分かりいただけたでしょうか。
日頃からの意識が大切なので、ぜひ記事を参考に過ごしていただけたら幸いです。
夏場は過ごしづらい方、熱中症について心配な部分がある場合は、お近くの介護サポーターや医療サポーター(医師・薬剤師・看護師など)にお気軽にご相談くださいね。

【参照】

(1) 令和2年(6月から9月)の熱中症による救急搬送状況
(2)「熱中症について」:みんなの医療ガイド | 公益社団法人全日本病院協会
(3)高齢者は水分を失いやすい? その原因や適切な水分補給の方法とは | 暮らしうるおす ウォーターライフメディア