生活習慣の乱れ、社会環境の変化によって、糖尿病の患者さんは年々増加傾向にあります。
若い方だけではなく高齢者の方にも、糖尿病を患っている方は多いのではないでしょうか。
糖尿病の薬は、錠剤や注射など、さまざまな種類があります。
今回は、糖尿病についてと、治療に使われる薬について、介護する方、ご家族が知っておきたい要点を中心に解説します。
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糖尿病とは
糖尿病とは、血糖値を下げる働きがあるインスリンの作用が低下したり、インスリンの分泌が低下したりすることで、高血糖状態が続いてしまう病気です。
高血糖状態が長く続くと、糖尿病による三大合併症(神経障害、網膜症、腎症)が発症し、手や足先のしびれや疼痛、失明、透析になってしまう可能性があります。
糖尿病は、1型と2型がありますが、糖尿病患者の95%以上が2型に該当しています。(1)
糖尿病の治療に使う薬
糖尿病の治療に使われている薬はさまざまあります。
ここでは、糖尿病に使う薬を内服薬と注射剤に分けて解説します。
1.内服薬
内服薬には、インスリンの分泌を促進する薬、インスリンの働きを効きやすくする薬、糖の吸収を抑えたり糖を排泄させたりする薬の3種類に分けることができます。
薬の作用 |
分類 |
商品名(一般名) |
特徴 |
インスリンの分泌を促進する薬 |
SU(スルホニルウレア)薬 |
グリミクロン(グリクラジド)、 アマリール(グリメピリド)など |
血糖値を下げる効果が強い。しかし、長期使用すると、作用が弱くなる可能性がある。 |
速効型インスリン分泌薬 |
グルファスト(ミチグリニド)、シュアポスト(レパグリニド)、ファスティック(ナテグリニド) |
短時間で薬が効き始める。食後の高血糖を改善します。食事の直前に服用する。 |
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DPP-4阻害薬 |
ジャヌビア(シダグリプチン)、エクア(ピルダグリプチン)、テネリア(アログリプチン)、ザファテック(トレラグリプチン)。マリゼブ(オマグリプチン) |
血糖値の値に依存して作用を出すため、食事の影響を受けにくい。また、単剤で使用する場合は、低血糖のリスクも低いとされています。体重増加のリスクが低いこともメリットの1つです。 |
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GLP-1受容体作動薬 |
リベルサス(セマグルチド) |
血糖値の値に依存して作用を出すため、低血糖のリスクが低い。 |
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インスリンの働きを効きやすくする薬 |
ビグアナイド薬 |
メトグルコ(メトホルミン)、ジベトス(ブホルミン) |
古くから使用されている薬。単剤で使用すると、体重が増加しにくい薬ともされています。しかし、造影剤を使用する検査を行う時には、休薬期間が必要。 |
チアゾリジン薬 |
アクトス(ピオグリタゾン) |
インスリンの効き目を良くすることで血糖値を下げるため、低血糖のリスクは低い。 特徴的な副作用に浮腫みがあり、心不全の患者さんには使用ができません。 |
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糖の吸収を抑えたり糖を排泄させたりする薬 |
αグルコシダーゼ阻害薬 |
ベイスン(ボグリボース)、セイブル(ミグリトール)など |
食後の高血糖を改善する薬。そのため、食事の直前に服用するようにされています。 αグルコシダーゼ阻害薬を服用して低血糖を起こした場合は、必ずブドウ糖を摂取するようにして下さい。また、αグルコシダーゼ阻害薬を服用中、お腹の張りや下痢を起こす場合があります。 |
SGLT2阻害薬 |
スーグラ(イプラグリフロジン)、フォシーガ(ダパグリフロジン)、デベルザ(トホグリフロジン)など |
尿から糖を排出する働きを持つ薬。そのため、脱水症状になる可能性がある。高齢者の場合は、脱水症状が出ているのか分かりにくい場合があるため注意が必要。 |
内服薬には、2種類の成分を混ぜた配合剤もあります。
薬によって特徴が違うので、参考になれば幸いです。
2.インスリン製剤(注射剤)
インスリン製剤は、内服薬と違ってインスリンを直接補う薬です。
インスリン製剤は、原則として患者さん自身か、患者さんの家族が扱います。
インスリンの注射は、効果が現われるまでの時間や、効果の持続時間によって6種類に分類されます。
分類 |
商品名 |
特徴 |
超速効型 |
ルムジェブ、ノボラピッド、ヒューマログ、アピドラなど |
注射した後からすぐに効き始める。薬の効果時間はとても短い。食事に合わせて注射する。 |
速効型 |
ノボリンR、ヒューマリンR |
注射した後、約30分後に効き始める。超速効型よりゆっくりと薬が効く。食事に合わせて注射する。 |
中間型 |
ノボリンN、ヒューマリンN |
注射した後、ゆっくりと効き始める。ほぼ1日効果が続きます。1日のうち、決まったタイミングに注射する。 |
持効型 |
トレシーバ、ランタス、ランタスXR |
注射した後、ゆっくりと効き始める。中間型に比べて効果が長いため、1日安定した効果が得られる。1日のうち、決まったタイミングに注射する。 |
混合型 |
ノボラピッド30ミックス、ノボリン30R、ヒューマログミックス25など |
超速効型・速効型と中間型インスリン製剤を合わせた注射。食事に合わせて注射する。 |
配合型 |
ライゾデグ |
超速効型と持効型インスリン製剤を合わせた注射。食事に合わせて注射する。 |
インスリン製剤(注射剤)を使う時の注意点
インスリン製剤を使う時には、いくつか注意しなければならないことがあります。
・薬の名前を確認する
インスリン製剤は、先ほど解説しましたが、種類がさまざまあります。
また、複数の注射を使っている方もいらっしゃいます。
間違った薬を注射しないように、注射を行う時は、必ず薬の名前を確認するようにしましょう。
・注射の単位数(量)や、タイミングを確認する
注射の種類によって、打つタイミングが違います。
また、安定した血糖値のコントロールを行うために、注射の単位数も決まっています。
必ず打つタイミングや、注射の単位数を確認するようにしましょう。
・注射の針は使いまわさない
注射の針を毎回捨てるのはもったいないと思う方もいるのではないでしょうか。
注射の針は、1度使ったら捨てるようにしましょう。
針を使い回してはいけない理由は、衛生的に良くない、1度使用すると針が刺さりにくくなったり針先が曲がってしまうからです
・毎回同じ場所に注射を打たない
インスリン製剤を使う時、注射の位置として腹部、大腿部、腎部、上腕などが使用されます。部位によってインスリン製剤の吸収速度が違うため、担当医に指示された場所に注射するようにして下さい。ただし、指示されている部位の中でも毎回同じ場所に注射をすると、注射部位が硬くなってしまいます。それを避けるために、毎回2〜3cmぐらいずらして注射するように心がけましょう。
低血糖になった時の症状や対処方法
糖尿病の治療薬を使っていると、血糖値が下がりすぎてしまう低血糖が起こってしまう場合があります。低血糖は、気付いた時点で正しく対処することが大切です。
ここでは、低血糖になった時の症状や、対処方法を解説します。
低血糖になった時の症状
低血糖は、血糖値によって現われる症状が違います。
軽度の低血糖の場合は、強い空腹感を感じたり、体のだるさを感じたりします。(2)
血糖値(mg/dl) |
症状 |
70~50 |
脈が速くなる、強い空腹感、不安感、発汗、手足の震え、胸がどきどきする |
50~30 |
眠気、頭痛、めまい、集中力が低下する、体の怠さ、目のかすみ、あくび |
30以下 |
痙攣、意識がもうろうとする、昏睡、異常行動 |
低血糖になった時の対処方法
低血糖になった時の対処方法は主に3つあります。(3)
・ブドウ糖を摂取する
低血糖になった場合(血糖値70〜30)は、ブドウ糖(10〜20g)を摂取するようにしましょう。
普通の砂糖よりもブドウ糖の方が吸収が早いため、ブドウ糖を摂ることがおすすめです。
固形の摂取が難しい場合は、ブドウ糖を含んでいる清涼飲料水(150〜200ml)を摂取して下さい。ブドウ糖は薬局で購入できる場合があります。
・グルカゴンの点鼻薬や注射を使用する
緊急の対処が必要な場合(血糖値30以下)はグルカゴンの点鼻薬や注射を使用するようにしましょう。
グルカゴンは、血糖値を上げる働きがあります。注射の場合は、医療機関で正しい使い方の指導を受けた患者さん自身やその家族の方のみが使用することができます。
グルカゴンの点鼻薬や注射を使用した後は、必ず担当医に連絡して受診するようにしましょう。
・重度の低血糖の症状が出ている場合は担当医に早急に連絡
意識がもうろうとしているなど重度の低血糖症状(血糖値30以下)が出ている場合は、早急に担当医に連絡して受診するようにして下さい。意識がもうろうとしている時に、口からブドウ糖を摂取させようとすると、肺に入ってしまう危険性があるので、無理矢理摂取させようとするのは止めてください。また、ブドウ糖を摂取しても症状が改善されない場合も、受診するようにしましょう。
高齢者の場合、低血糖の症状に気付かなかったり、ぼーっとしている、うとうとしているなどの症状は、認知症と間違われてしまう場合もあります。簡単に血糖値を測定することができる血糖自己測定(SMBG)があるので、日頃から血糖値を測定しておくようにしましょう。
薬だけではなく正しい生活習慣を行うことが1番大事
糖尿病治療薬は、内服薬・注射剤ともに薬の種類が増えています。
しかし、糖尿病の治療において1番大切なことは、正しい生活習慣を行うことです。適度な運動や、バランスの良い食事を摂るように心がけましょう。
糖尿病の治療薬は、治療において補助的な立ち位置になります。薬に頼るのではなく、生活習慣を正すように心がけましょう。
【参照】
(1)第一版 病単(p106~107)
(2)第一版 病単(p110)