高齢者の中には、1日にたくさんの薬を飲んでいる方が多く見られます。
その中でも、高血圧のお薬と痛み止めのお薬を一緒に飲んでいる方を見かけたことはありますか?
実は、薬の飲み合わせにより、腎臓の機能を低下させてしまう可能性があります。
実際、腎臓の機能を低下させるリスクを上げてしまったという報告もあります。(1)
今回は、介護現場で知っておくべき薬の飲み合わせ「トリプルワーミー」について解説します。
また、介護現場におけるお薬の管理に関する相談を公式LINEにて受付しております。
【情報配信中】施設・ご自宅へのお薬のお届けや管理を薬局にお願いする方法など
腎臓の働きとは
腎臓は、握りこぶしほどのサイズしかありませんが、私たちの体にとって大事な働きを持つ臓器です。腎臓の働きは、大きく分けると3つあります。(2)
体の中の老廃物を排出する
血液の中には、私たちの体に「必要な物」と「不必要な物」が含まれています。腎臓では、血液に含まれている老廃物・余分な水分・摂りすぎた塩分を濾過し、血液を綺麗にしてくれます。
濾過された「不必要な物」は、最終的に尿として体の外に排出されます。
体を調節する物質(ホルモン)を放出している
体を調節する物質(ホルモン)の一部は、腎臓から放出されています。
血液を作るために必要なホルモン・血圧を調節しているホルモンを放出したり、骨を丈夫にするために必要なビタミンDの働きを活発にしたりする働きがあります。
ミネラルや電解質を調節している
体の中の水分量、Na(ナトリウム)・K(カリウム)・Ca(カルシウム)・P(リン)などの電解質の調節も腎臓の働きの1つです。
ミネラルや電解質は、多すぎても少なすぎても私たちの体に何らかの影響が出てしまいます。そのため、腎臓の働きにより、ミネラルや電解質をバランスよく保つことができます。
トリプルワーミーとは
トリプルワーミーとは、急性腎障害(AKI)のリスクを上げてしまう可能性がある3種類の薬の飲み合わせのことです。
その3種類の薬は、血圧を下げる薬・尿を出す薬・痛みを抑える薬です。(1)
血管を拡げる薬(血圧を下げる薬)
血圧を下げる薬は、以前の記事でご紹介させていただきました。
その中でも、血管を拡げる薬の一部がトリプルワーミーに該当しています。
アンギオテンシンⅡ受容体遮断薬 |
アジルバ錠(アジルサルタン)、アバプロ錠(イルベサルタン)、オルメテック錠(オルメサルタン)、ディオバン錠(バルサルタン)、ブロプレス錠(カンデサルタン)など |
アンギオテンシン変換酵素阻害薬 |
エースコール錠(テモカプリル)、コナン錠(キナプリル)、コバシル錠(ぺリンドプリル)、タナトリル錠(イミダプリル)、レニベース錠(エナラプリル)など |
尿を出す薬
尿を出す薬も血圧を下げる作用があるため、高血圧の方に使われることが多い薬です。
高血圧以外では、うっ血(血液の流れが悪くなり滞ってしまうこと)性心不全や肝硬変による浮腫みの改善に使用されます。
サイアザイド系利尿薬 |
フルイトラン錠(トリクロルメチアジド)、ヒドロクロロチアジド錠など |
非サイアザイド系利尿薬 |
ナトリックス錠(インダパミド)、バイカロン錠(メフルシド)など |
ループ利尿薬 |
ラシックス錠(フロセミド)、ルプラック錠(トラセミド) |
カリウム保持性利尿薬 |
トリテレンカプセル(トリアムテレン)、アルダクトンA錠(スピロノラクトン)、セララ錠(エプレレノン) |
痛みを抑える薬
高齢者の方は、関節の痛み・腰の痛みなどを訴える方が多いため、痛みを抑える薬もよく飲まれている薬の1つですよね。
実は、痛みを抑える薬の一部もトリプルワーミーに該当しています。
NSAIDs |
ロキソニン錠(ロキソプロフェン)、ボルタレン錠(ジクロフェナク)、インテバンSP(インドメタシン)、ペオン錠(ザルトプロフェン)など |
定期的に内科を受診している方が、痛みを感じたため急遽整形外科に受診したとしましょう。その時、新しい薬を出してもらう可能性がありますよね。このように、複数の病院を受診した場合、トリプルワーミーが起こってしまう可能性があります。
もし、3種類の薬を一緒に飲んでいるのか不安に感じた方は、薬剤師に相談しましょう。

トリプルワーミーによってなぜ急性腎障害(AKI)のリスクが上がるのか
血管を拡げる薬は、血圧に関係している血管だけではなく、腎臓から血液が出ていく通り道を拡げる作用もあります。
尿を出す薬は、体の中にある水分を外に排出するので、結果的に血液の量が減少します。
また痛みを抑える薬には、腎臓に入っていく血液の通り道を狭くしてしまう作用があります。
これらの3種類の薬の効果が重なることで、腎臓に十分な血液が供給されない状態が起き、急性腎障害(AKI)のリスクを上げてしまいます。(3)
急性腎障害(AKI)の代表的な症状は
急性腎障害(AKI) が起こってしまった場合、どのような症状が現れるのか知っておくことで早期対応に繋がります。
ここでは、急性腎障害(AKI) の代表的な症状についてまとめました。(4)
急性腎障害(AKI) の初期に現れる症状 |
尿の量が減る、顔や手や足に浮腫みが出る、体重が増える |
急性腎障害(AKI) が持続している状態で出る症状 |
体の怠さ、食欲が低下する、吐き気がある、全身のかゆみ、胸の痛み、筋肉のひきつり、手足の震えなど |
高齢者の方は、年齢の影響や、トリプルワーミー以外の薬によっても腎臓の機能が低下する場合があります。
もし、日常で見られないような症状が現れた時は、担当の先生に報告するようにしましょう。

かかりつけ薬剤師やお薬手帳を活用しましょう
今回の記事では、以下について解説しました。
・腎臓は3つの働きがある
・トリプルワーミーとは急性腎障害(AKI) のリスクを上げてしまう3種類の薬(血圧を下げる薬・尿を出す薬・痛みを抑える薬)の飲み合わせ
・トリプルワーミーによって急性腎障害(AKI) のリスクが上がる理由
・急性腎障害(AKI)の代表的な症状
市販薬の中にもトリプルワーミーの原因となる成分が入ってる商品があるため、トリプルワーミーを起こしてしまう可能性があります。
トリプルワーミーを起こさないためにも、普段からお薬手帳やかかりつけ薬剤師を活用するようにしましょう。
【参照】
(1)「Triple Whammy」(レニン・アンジオテンシン系阻害薬,利尿薬,非ステロイド性抗炎症薬の 3 剤併用)による腎機能への慢性的な影響
(2)第1版 薬がみえるvol.1p418
(3)薬剤性腎障害の病理

