【薬剤師監修】飲みにくい薬に使える「とろみ調整食品」を紹介

【薬剤師監修】飲みにくい薬に使える「とろみ調整食品」を紹介

「薬を飲み込みにくくなった」
「水で薬を飲むとむせてしまう」

高齢者は、嚥下(えんげ)障害という「飲み込む機能が低下する障害」が起こりやすいことをご存じですか?

介護現場において、治療に必要な薬が飲めなくなると、とても困ってしまいますよね。
薬を飲みやすくする方法があれば、取り入れてみたいと思いませんか?

今回の記事では、食事や飲み物にとろみをつける「とろみ調整食品」をご紹介します。
介護現場からの問い合わせも多い、さまざまなとろみ調整食品について、薬剤師である筆者がご家族目線に寄り添ってお伝えしていきます。

  • とろみ調整食品とはなにか
  • とろみ調整食品を使って、薬を飲むには
  • とろみ調整食品以外で、薬を飲みやすくする方法

飲み物などで、高齢者がむせていることに気づいたら、「とろみ調整食品」を検討してみましょう。

「とろみ調整食品」とは

とろみ調整食品とは、文字通りとろみをつけるための食品です。とろみをつけることによって、食べ物や飲み物などが、ゆっくりと喉(のど)から食道へ送られるのは想像できますよね。
病院や介護施設の97%が、とろみ調整食品を使用しているというアンケート結果があります。[1]
また、とろみ調整食品の市場規模も年平均4%で拡大している報告もあり、かなり活用されているのがわかりますね。[2]

なぜとろみは必要か?

食べ物や飲み物を飲み込む時には、気管に飲食物が流れ込まないよう、気管の入口のフタ(喉頭蓋:こうとうがい)が閉まります。フタが閉まることで、気管ではなく食道に飲食物が流れるという仕組みです。

飲み込みがうまくいかない(嚥下障害:えんげしょうがい)の方は、フタがタイミングよく閉まらず気管に入ってしまうため、むせたり咳込んだりしてしまいます。
また、飲食物が気管に入ると、炎症を起こし誤嚥性肺炎になる可能性も。

そこで、飲食物にとろみをつけてゆっくり気管を通すことで、フタが閉まりやすくなるというわけです。

とろみ調整食品の特徴

とろみなら片栗粉でいいのでは、と思いませんか?
ここでは、さまざまな「とろみ調整食品」の特徴を紹介していきます。

  • 加熱しなくてもとろみをつけられる
  • 冷たいもの、温かいものにも溶ける
  • 短時間でとろみをつけられる
  • とろみ具合を調整することができる
  • ジュースや牛乳、みそ汁など、味を変えることなくとろみをつけられる

片栗粉と比べて、とても使い勝手が良いとわかりますね。

とろみ調整食品の原料

とろみ調整食品の原料は、でんぷんや増粘多糖類(ぞうねんたとうるい)です。
増粘多糖類とは、天然の果実や豆、海藻などの成分で、ジャムやアイスクリーム、ドレッシングなどに使われています。

使われる増粘剤によってデンプン系(第1世代)、グアーガム系(第2世代)、キサンタンガム系(第3世代)に分類されます。[3]
最近では味やにおいが少ないキサンタンガム系が主流となって使用されています。

「とろみ調整食品」を使って薬を飲む

とろみ調整食品は食事だけでなく、薬を飲むときにも使うことができます。
治療に必要な薬を、むせたり咳込んだりせずに服用したいですよね。

服薬方法

とろみ調整食品の箱などに書かれている通りに、水やお茶などにとろみをつけます。
服用する薬や、水分の制限があるかなどにもよりますが、一般的にはコップ1杯(150~180mL)程度の量を使用します。[4]

通常の薬を飲む時と同じく、薬を口に含み、とろみのついた液体と一緒に飲んでくださいね。
液体にとろみがついているので、薬がゆっくりと食道に流れ込んでいきます。

注意点

とろみ調整食品を使用すると、効き目に影響する薬があると報告されています。[5]
口の中に入れるとすぐに唾液で解ける「OD錠(口腔内崩壊錠)」や、形が崩れやすい酸化マグネシウムなどは、薬の効き目が遅くなるなど、さまざまな例が挙げられています。

「とろみ調整食品」を使う際は、安心して使うために、事前に薬剤師へ相談しておきましょう。

薬を飲みやすくする、その他の方法

とろみ調整食品についてご紹介しましたが、それ以外の「薬を飲みやすくする方法」についてもご紹介します。
高齢者だけでなく、一般の方やお子様にも使えますので、ぜひ参考にしてくださいね。

オブラート

オブラートは、デンプンを薄い糊状にして乾燥させたものです。[6]
薬をオブラートに包み、少し水につけることで、表面が滑らかになり飲みやすくなります。
丸タイプや四角タイプがあるので、使いやすい形を選んでくださいね。

服薬ゼリー

服薬ゼリーの原料は、水あめや寒天、増粘多糖類など。
錠剤であれば、服薬ゼリーで薬を包み込み、ゴクンと飲みこみます。
粉薬なら、スプーンで服薬ゼリーとよく混ぜ合わせてから、飲み込むのが一般的です。
最近ではイチゴ味やチョコ味など、味も工夫されているので、お子さんにも人気がありますね。

「とろみ調整食品」を使って上手に服薬しましょう

この記事では、嚥下機能が低下した方に便利な服薬方法を紹介しました。

  • とろみ調整食品は、飲食物がゆっくりと喉(のど)から食道へ送られるように、とろみをつける目的の食品
  • とろみ調整食品の原料は、でんぷんや増粘多糖類(ぞうねんたとうるい)
  • 加熱しなくてもとろみをつけられるなどの特徴がある
  • とろみ調整食品以外にもオブラートや服薬ゼリーで服薬しやすくなる

とろみ調整食品などを使っても、どうしても飲み込みにくい場合もあるかもしれません。
その場合、薬や現在の病状によっては、下記のような対策も必要になります。

  • 錠剤を口腔内崩壊錠へ変更
  • 錠剤を貼り薬へ変更
  • 2種類の薬が1つの錠剤になった配合錠へ変更
  • 処方自体の見直し

高齢者の「飲み込みにくい、むせる、咳込む」などの様子に気がついたら、医師や看護師、薬剤師など医療サポーターに相談してみましょう。

【参照】

[1]特別用途食品に係る使用実態調査2014年,特別用途食品の活用に関する研究会報告書,P33
[2]規制改革会議 第29回健康・医療WG 参考資料,日本メディカルニュートリション協議会
    日本流動食協会,P13
[3]独立行政法人農畜産業振興機構> でん粉 > 話題 > でん粉などを原料とするとろみ調整食品の利用について
[4]公益社団法人 高知県薬剤師会 お薬の飲み方
[5]とろみ調整食品が速崩壊性錠剤の崩壊,溶出,薬効に及ぼす影響,富 田 隆ら,August 19, 2017
[6]独立行政法人農畜産業振興機構> でん粉 > でん粉のあれこれ > オブラートとでん粉

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