「自分が飲む薬は、把握してるから大丈夫!」
「薬は本人が整理して、認知症の予防に繋げよう」
このように、介護現場において「介護者本人が薬を管理しているケース」を経験したことはありませんか?
本人が管理している薬について、家族が定期的にチェックできているのか、
しっかり飲めているか、薬が残っていないかの確認はとても重要です。
ここ数年、処方されたのに飲みきれず、残ってしまった薬(残薬)が問題になっています。[1]
・なぜ薬が残ってしまうのか
・残った薬はどうしたらよいのか
・今後、薬が残らないようにするためには
上記3点について、介護現場をサポートしている現役薬剤師の筆者が、ご家族の目線に沿って解説していきます。
薬が残る理由
そもそも、なぜ薬が残ってしまうのでしょうか?
理由はいろいろありますが、今回は5つのケースを紹介します。
「自分はどのパターンに当てはまるのか」一緒に確認していきましょう。
飲み忘れ
一番大きな問題は、飲み忘れです。[2]
飲み忘れた薬がどんどん残ってしまい、大量の残薬になっています。
飲み忘れは、薬が残ってしまうだけでなく、飲み忘れにより薬の効果が得られなくなりますよね。
場合によっては症状が悪化することもあるので、絶対に避けたいところです。
自己判断で、服薬をやめる
長く薬を飲んでいると、「もう薬を飲まなくても大丈夫」と思ってしまう方がいます。
医師や薬剤師からしっかり服用するよう指導されたにもかかわらず、自分で「体調が良いから、この薬は飲まなくてよい」と判断してしまうようです。
また、「薬を飲みたくない」と薬を飲むことをやめてしまう方もいます。
このケースも、薬が残ってしまうだけでなく、薬の効果が得られず体調を崩す可能性があり、大変危険です。
「症状が落ち着いているのは、薬を飲んでいるから」という理由を忘れないでくださいね。
普段飲まない薬なのに、「念のため」処方してもらう
実際に調剤していて多いと感じるのは、「念のため」に処方してもらった薬です。
- 風邪薬
- 便秘薬
- 睡眠導入剤
- 痛み止め
「念のため処方」は、わりと上記の薬が多い印象があります。
たとえば、念のための風邪薬を毎月5日分処方してもらっても、2日ほどしか服用しない場合は、3日分が残薬となってしまうのです。
これが毎月積み重なると、1年間では36日分の風邪薬が手元に残る計算になりますよね。
このように、余った薬が積み重なり、「残薬」として問題になってしまいます。
薬が無くなる前に受診する
次は、受診のタイミングによって薬が残るケースです。
前回の受診で30日分の薬を処方されたとします。
次回は少し早めの25日後に受診すると、5日分の薬が残薬に。
薬が無くなる前に受診することが原則ですので、余裕を持って受診するはずです。
この数日分が積もり積もって、気づいたときには大量の残薬になってしまう場合があります。
薬が変更になったが、変更前の薬を保管している
最後は、薬が変更になったにもかかわらず、保管している場合です。
たとえば、Aという薬を中止して、Bという薬に変更されたとします。
薬Aが何日分か残っていたとしても、医師が切り替えるよう指示があった場合はすぐに薬Bへ切り替えなければなりません。
すると、残っているAという薬は残薬になってしまいますよね。
他のケースと違うのは、Aという薬は今後飲まない可能性が高いということです。
このような場合は、Aという薬の対処について、医師または薬剤師にご相談くださいね。
大量に残薬を見つけたら、薬剤師に相談しましょう
いざ、本人が管理している薬をチェックしてみたら、大量に残っている薬があったとします。
さて、あなたはどのように対応したらよいのでしょうか?
答えは「まず薬剤師に相談しましょう」です。
薬剤師は残っている薬を確認した上で、再利用するのか、廃棄するのか対応を考えてくれます。
残薬を再利用する場合
- 現在も継続して服用している薬
- お渡ししてからそれほど年月が経っていない薬
- 保管状況が適切な薬
上記の残薬であれば、再利用が可能です。
この再利用を「残薬調整」とも言います。
残薬調整は、薬剤師だけの判断では出来ません。
必ず医師の了承が必要です。
残薬調整にも、医療サポーター同士の連携が欠かせませんね。
残薬を廃棄する場合
- すでに処方が変更され使わない薬
- お渡ししてから、かなり年月が経っている薬
- 高温、直射日光に長時間当たっていたなど保管状況が悪い薬
上記の残薬は、再利用できません。
間違って服用しないように、薬局で引き取り廃棄します。
薬が残らないようにするために、できること
残っている薬を整理したあとは、今後薬が残らないよう、対策を考えます。
薬が残ってしまった原因を突き止めて対策をしないと、また同じように残薬が増えてしまうからです。
原因の特定と対策には、家族と薬剤師の連携が重要になります。
上記は飲み忘れ対策のほんの一部ですので、ぜひお気軽に薬剤師に相談してみてくださいね。
薬剤師と協力して、薬を残さない工夫をしよう
この記事では、残薬の対処法について紹介しました。
- 残薬は、飲み忘れ・自己判断での中止・受診のタイミングなどが原因
- 残薬を見つけたら薬剤師を活用し、調整してもらう
- ふたたび残薬が出ないように、家族と薬剤師が連携して対策する
以上がとても重要だということを、お分かりいただけましたか?
ご本人が薬を管理している場合は、定期的に管理をチェックしてみてくださいね。
チェックした結果、残薬が増えているようであれば、ぜひ薬剤師に相談してください。親身になって、一緒に対策を考えてくれますよ。
薬の予備については、災害時を考えても1週間分ほどで十分だと思います。
なぜなら、大規模災害時はお薬手帳を薬局に持参すれば、最低限の薬を調剤してもらえるため。いざという時のために、覚えておいてくださいね。
【参照】
[1]医療保険財政への残薬の影響とその解消方策に関する研究(中間報告),平成27年度厚生労働科学特別研究
[2]「医薬分業の考え方と薬局の独立性確保」参考資料<薬局・薬剤師の業務について>残薬の理由について,P17(スライド2枚目),平成27年3月12日,厚生労働省