「薬を飲み忘れてしまった...」
「飲み忘れた薬はどうしたらいいの?」
薬を飲み忘れてしまうと、病状が悪化し、体調を崩してしまうこともあるので心配ですよね。
今回の記事では、介護現場をサポートしている現役薬剤師が、以下の2点を中心に解説します。
- 介護現場で、薬の飲み忘れを防ぐ方法
- 万が一、服薬を忘れてしまった場合の対応
服薬の大切さについて、家族や職員の方と共有できれば幸いです。
飲み忘れなどの服薬事故が多い
介護現場では、飲み忘れを含め、誤薬(ごやく)と言われる事故が報告されています。[1]
誤薬には以下が含まれます。
- 飲むべき薬の種類を間違えた
- 薬を飲む量を間違えた
- 薬を飲む時間を間違えた
- 薬の飲み方を間違えた
- 薬を飲み忘れてしまった
- 薬を落としてしまった
報告された事故のうち、誤薬は45%となっており、薬に関する事故報告が最も多くなっています。
薬を飲み忘れると、介護現場では事故扱いになってしまうのです。
介護現場において、服薬はリスクと隣あわせで、かなりの負担になっていると分かりますよね。
薬の飲み忘れを防ぐために
介護現場には、服薬が欠かせません。
大切な薬を飲み忘れないようにするには、どのような対策が必要か考えてみましょう。
服薬前に、薬を確認する
薬剤師から薬を受け取る際は、薬の説明書き(薬情:やくじょう)やお薬手帳など薬の情報が渡されます。
この薬情は、薬の写真がカラーで印刷してあることがほとんどです。
薬情に印刷されている薬と手元にある薬を照らし合わせて、合っていることを確認してから服薬する習慣をつけると飲み忘れも防ぎやすいですよね。
安心して薬を飲むために、薬の種類や名前、朝食後などの飲み方を照らし合わせてみましょう。
複数人で、服薬チェック
施設の場合は、複数の職員によるダブルチェックも効果的です。
自宅で介護をしている場合は、他の家族と協力してダブルチェックを行うことがが難しい場合もありますよね。
そんな時は、薬剤師を活用しましょう。
薬のセットを薬剤師が行い、家族がダブルチェック側にまわるのです。
万が一ミスがあったとしても、ダブルチェックをすることで、事前に防げるので安心です。
飲み忘れないためのルール作り
薬情と薬を照らし合わせることやダブルチェックなど、飲み忘れを防ぐためには工夫が必要です。介護をする家族や職員のうち、誰が何をするのかマニュアルを作成してルール化することは、とても大切です。
- あらかじめ薬をセットするのは誰か
- 食事の際に、食卓に薬を置くのは誰か
- 実際に薬を飲むのを確認するのは誰か
このように、役割と担当を決めておくと、分かりやすくておすすめです。
また、以下のように、薬を飲む時や飲んだ後のルールを明確にしておくのも良いですよね。
- 食事の際に、食卓のどこに薬を置くか
- 薬を飲む瞬間を確認する
- 飲み終えた薬の空き包装は、確認するまで捨てない
自宅や施設の服薬マニュアルを作ることは、とても大切です。
ただし、マニュアルを作るときには、作業をたくさん入れすぎないようにしましょう。
あまりにもやることが多くなってしまうと、家族や職員の負担が増えてしまいます。
担当した職員が押印する、チェック表を作っている施設もあります。
何か所も押印する必要があるのでは、手間ばかりが増えてしまいますよね。
「一度作っておしまい」ではなく、良いものに作り直していけば良いので、なるべく手間がかからない、飲み忘れを防ぐ方法を取り入れてみましょう。
もしマニュアルを作ってみたいと思ったら、ぜひ薬剤師に相談してください。
親身になって話を聞き、アドバイスをしてくれるでしょう。
万が一、薬を飲み忘れたときは
万が一、薬を飲み忘れた際はどのようにすれば良いでしょうか。
薬を飲み忘れた場合の原則が2つあります。[2]
- 飲み忘れに気がついたら、すぐに飲む
- 次の飲む時間が近い場合は、その分は飲まずに、その次に1回分を飲む
まず、飲み忘れに気づいた場合は、すぐに忘れた1回分を飲むことが大原則です。
しかし、朝に飲む薬を飲み忘れたことを夜に気づいた場合は、夜に朝の薬は飲まず、夜は夜に飲む薬1回分だけを飲みましょう。
ただし、薬の種類によってはこの2つの原則と対応が違う場合もあります。
あらかじめ、飲むべき薬を飲み忘れてしまった場合の対応を、医師・薬剤師に確認しておくと安心ですね。
飲み忘れを防ぐ対策を!
この記事では、薬の飲み忘れについて解説しました。
- 介護の事故報告の約半数が、飲み忘れを含む誤薬
- 誤薬を防ぐためには、ダブルチェック・薬情との照らし合わせ・ルール作り
- 飲み忘れに気づいたら、①すぐ飲む②次の時間が近い場合は飲まない
介護現場では、薬の管理も大きな負担となります。
万が一、飲み忘れや間違って飲んでしまった場合には、重大な健康被害につながりかねません。
そう考えると、精神的なプレッシャーを感じやすくなり、さらなる負担になってしまいますよね。
薬の管理を軽減できる方法は、薬剤師がたくさん知っています。
薬剤師と連携して、飲み忘れや誤薬を防ぎましょう!
【参照】
[1]令和2年度 介護サービス事業者集団指導資料 共通事項,札幌市保健福祉局 介護保険課
[2]知っておきたい くすりの知識,厚生労働省 日本薬剤師会,令和2年10月