【薬剤師監修】介護現場でも気をつけたい「脱水症」と「熱中症」

【薬剤師監修】介護現場でも気をつけたい「脱水症」と「熱中症」

「暑くなると、脱水症が心配......」
「夏は、熱中症も注意しないと!」
「今飲んでいる薬は、脱水症と関係があるの?」

気温が高くなってくると、脱水症や熱中症が心配になりますよね。
令和元年(2019年)の記録によると、熱中症による死亡者数のうち、81.7%が65歳以上です。[1]
高齢者の多い介護現場では、飲んでいる薬の種類によって、さらに注意が必要です。

今回の記事では、介護現場をサポートしている現役薬剤師が、以下を中心に解説します。

  • 脱水症状・熱中症を早く見つけるポイント
  • なぜ高齢者に脱水症や熱中症が多いか
  • 脱水症を起こしやすい薬

介護現場の脱水・熱中症対策に、役立ててもらえたら嬉しいです。

脱水症・熱中症のリスクとは

ここ数年、猛暑の夏が続いていますよね。
介護現場でも心配な「脱水症と熱中症」について整理してみましょう。

脱水症とは

体内の水分やミネラルが、汗で失われ補給も追いつかず、少なくなっている状態です。
脱水症になると、血液量が減るので十分に血液が流れなくなり、いろいろな臓器にダメージを与えてしまいます。
ミネラルが不足するため、脚がつる・しびれるなどの症状が起こることも。[2]

熱中症とは

熱中症は、気温が高いことで起こる体調不良の総称です。体内の水分やミネラルのバランスが崩れ、体温の調節ができなくなります。体温が上がり、めまいや吐き気などの症状が出ることも。最悪の場合は命の危険もあります。

脱水症・熱中症を見逃さないために

介護現場では、脱水症や熱中症の初期に気づくことがポイントです。
例えば、脱水症に気づくポイントとして以下が挙げられます。[3]

  • いつもより汗が出ている、全く汗が出ていない
  • 体温が上がっている
  • ぼんやりしている
  • めまいや立ちくらみがある
  • 食欲がない
  • 口の中が乾いている
  • 尿の回数や量が少ない

いつもと違う様子から「もしかして脱水症かもしれない」と疑うことが重要になってきます。 

高齢者で脱水症・熱中症が多い4つの理由

高齢者に脱水症や熱中症が多いのは、4つの原因が考えられます。

年齢に伴い、体内の水分量が減っている

成人男性は体重の約60%が水分です。ところが、高齢者は筋肉量が減ってしまうこともあり、体内の水分量は50%ほどになってしまいます。
もともと、体内にある水分が少なくなっているので、脱水症が起きやすいというわけですね。[4]

暑さを感じにくい

高齢者は、暑さ寒さを感じ取る感覚機能が衰えています。
本来、暑いと汗をかいて体温を下げようとするのですが、高齢者ではうまく機能しません。
そのため、熱が体内に残りやすくなります。
[5]

のどが渇きにくい

体内の水分量が減ってくると、脳が「水分を摂りましょう」と指令を出し、喉が渇くという仕組みになっています。高齢者はこの機能も低下してしまうので、体内の水分量が減っていても、気づきにくいのです。

水分摂取量が減る

胃腸の働きも低下し、食事量も減ってきます。また、うまく飲み込めない嚥下障害(えんげしょうがい)などにより、水分を摂りたがらない高齢者もいますよね。
摂る水分が減ってしまう一方で、尿や便などで出ていく水分は変わらないので、体内の水分量は減ってしまいます。

薬による脱水症状にも注意しましょう

飲んでいる薬が、脱水症を引き起こす場合があります。
どんな薬が脱水症の原因になってしまうのか把握しておくと、脱水症に早く気づくことができますよね。

利尿剤

心臓や肝臓、腎臓の病気や、高血圧などでは、利尿剤(体内の余分な水分を、尿として体の外に出す薬)が処方されることがあります。
体内の余分な水分を、尿として体の外に出すためです。
体内の水分が減っている状態で、さらに利尿剤を服用すると、脱水症になる危険があります。
だからと言って、自己判断で薬を中止することはできません。また、医師から水分制限を指示されている場合もあります。脱水にならないように、あらかじめ医師や薬剤師に相談しておきましょう。

便秘薬

たまった便を出しやすくする便秘薬ですが、効きすぎると軟便や下痢になってしまいます。軟便や下痢になると、多くの水分が便と一緒に体の外に出てしまいますよね。便秘薬は、便の状態に合わせて減らせる薬です。気になる場合は、医師や薬剤師に相談してみてください。

尿に糖を出すタイプの糖尿病の薬

尿に糖を出すタイプの糖尿病薬を使うと、尿の量も増えてしまいます。これにより、体内の水分量が減ってしまうのです。治療上どうしても必要な場合があるため、高齢者には注意するよう、限定した使用が決められています。[6]

また、メトホルミンという糖尿病の薬は、脱水気味になると、乳酸アシドーシスという副作用が起こりやすいことがわかっています。薬によっては、特に脱水にならないよう注意が必要ですね。

介護現場でも脱水症・熱中症の対策を!

この記事では以下について解説しました。

  • 脱水症は、体内の水分やミネラルが減っている状態
  • 熱中症は気温が高いことで起こる体調不良の総称
  • 脱水症・熱中症は初期に気づくことが大切
  • 高齢者に多い4つの理由
    ①体内の水分量が減っている
    ②暑さを感じにくい
    ③のどが渇きにくい
    ④水分を摂る量が減る
  • 脱水症の原因になる3つの薬
    ①利尿剤
    ②便秘薬
    ③尿に糖を出すタイプの糖尿病の薬

脱水症や熱中症を防ぐには、こまめに水分と塩分を補給することが重要です。
ただし、医師から水分や塩分を制限されているかどうか、あらかじめ確認しておきましょう。
薬剤師から医師へ確認できるので、気軽に相談してみてくださいね。

介護現場では、室温や要介護者の服装に気を配る必要があります。
対策をしっかりして、脱水症・熱中症を防ぎましょう。

【参照】

[1]年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~令和元年),厚生労働省
[2]厚木胃腸科医院 > 脱水症・熱中症に気をつけましょう
[3]経口補水液OS-1 > 脱水対策 > 素早く見つけて、すぐ対策! 脱水症&熱中症 > 脱水のサインを見逃さないで
[4]大塚製薬 >  ニュートラシューティカルズ関連事業 >  事業紹介 > 水分補給 >  生命の源、「水」 >  身体と水分
[5]テルモ体温研究所 > 体温と生活リズム > 高齢者の体温 > 体温調節機能が低下してくる
[6]糖尿病リソースガイド > 記事一覧 > SGLT2阻害薬 「高齢者への使用では注意が必要」 順天堂大・綿田教授が講演
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