「便がなかなか出ない」
「お腹が張っている感じがする」
「トイレに行く様子がない」
介護現場で、高齢者が便秘かもしれないと思う場面はありませんか?
便秘は、高齢になると増加する傾向があります。また、ある高齢者施設では、50%の方が便秘になっているという報告もあります。(1)
このように、介護現場において便秘はよく見られる病気の1つです。
今回は、高齢者が便秘になる原因、対処方法、使用される薬について解説します。
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便秘とは
便秘とは、便の水分が少なくなることで便が硬くなったり、便が通る腸が狭くなったりすることで、便が出にくい状態になることです。
通常は1日1~2回、2~3日に1回の便が出ます。
しかし、毎日便が出ても硬くて量が少なかったり、苦痛を感じたりする場合は、便秘になっている可能性があります。(2)
また、便秘には2種類のタイプがあります。(3)
機能性便秘 |
筋力の低下や薬の副作用などにより、腸の動きが悪くなったり、腸の機能が低下したりすることで起こる便秘。 |
器質性便秘 |
腸に炎症が起きたり、腸に関係する病気になったりすることで起こる便秘。 |
便秘の種類によって、治療法も変わってきますよね。
便秘になった場合、どのタイプの便秘なのか検査をしてもらうことも大事ですね。
高齢者が便秘になりやすい5つの原因
高齢になるほど便秘になりやすいのはなぜだと思いますか?
便秘になりやすい原因を知っていると、対処法にも繋がりますよね。
ここでは、高齢者が便秘になりやすい5つの原因を説明します。(4)
1.ご飯の量が減っている
高齢者になると、ご飯の量が減ってしまいます。食べた物が便として出るのはご存じですよね。ご飯の量が減ってしまうと、便の量が減ってしまいます。
そのため、便を出せという指令も出しにくくなり、便秘になってしまいます。
2.腸の動きが悪くなっている
腸が動くことで、出口である肛門に便が運ばれます。しかし、腸の動きが悪くなると、便が腸の中で留まる時間が長くなります。腸は、水分を体の中に取り込む働きもあります。便が腸の中で留まる時間が長ければ長いほど、便の水分を取り込んでしまうため、便が硬くなり便秘になります。
3.便を出す力が弱くなっている
便を出す時、お腹のあたりに力を入れて出しますよね。高齢者になると筋力が低下するため、便を出す時に必要な力が十分に出ず便秘になってしまいます。
4.便を出しなさいという指令が感じにくくなっている
肛門近くに便が到着すると、「便を出しなさい」と命令が出ます。しかし、高齢者になると、その命令を感じにくくなってしまいます。命令を感じ取れず、トイレに行くタイミングを逃してしまうため、便秘になってしまいます。
5.薬の副作用
高齢者は高血圧、パーキンソン病、認知症など、何かしらの病気を抱えている方が多いですよね。薬の種類によって、便秘になりやすい薬もありそれらを飲まれていた場合、便秘になってしまう可能性があります。
高齢者が便秘になる原因はさまざまあります。
どの原因が当てはまっているのか考えるのも大事ですね。
介護現場でのおすすめ対処法
高齢者に多い便秘ですが、簡単にできる対処法があります。
ここでは、介護現場でおすすめの対処法をご紹介します。(5)
1.適度な運動をする
年齢に関係なく、適度な運動をすることは体にとって大事なことです。
体を動かすことで、筋力の低下を防ぐことができます。また、腸の動きを活発にしてくれる効果もあります。
軽く散歩をする、体操をするなど、負担がかかりすぎないように体を動かすようにしましょう。また、排便体操という体操もあるので、参考にしてみて下さい。(6)
2.食物繊維や水分を摂る
食物繊維は、便の原料になる大事なものです。また、食物繊維には水溶性(溶けやすい)と不溶性(溶けにくい)の2種類あります。(7)
どちらの食物繊維も、便を出すために大切な働きをもっているため、バランスよく摂ることが大事です。
高齢者になると、水分も不足しがちになります。水分が不足すると、便も硬くなってしまいます。便を硬くしないためにも、細かく水分補給をするようにしましょう。
3.便が出ないなと思ってもトイレに行くように声をかける
高齢者は便を出しなさいという命令を感じにくくなり、トイレのタイミングを逃してしまいます。タイミングを少しでも逃さないためにも、トイレに行くように声をかけるようにしましょう。
4.マッサージをする
お腹のマッサージをすると、腸の運動を活発にさせる効果があります。
マッサージの方法は、腸の向きに沿って「の」の字を書くようにお腹をマッサージしてあげましょう。マッサージと一緒に、お腹や腰を温める温罨法(おんあんぽう)を行うとより効果が出ます。(8)
上記ご紹介した4つの対処法は、普段から実行しやすいですよね。
薬に頼るのは1番早い対処法かもしれませんが、薬以外で実行できる対処法も試してみて下さい。
便秘に使用される薬について
どうしても便が出ない場合、薬に頼る場面もありますよね。
便秘に使用される薬は、さまざまな種類があります。
ここでは、便秘に使用される薬について種類別に説明します。(9)
1.腸を刺激する薬
薬によって腸を刺激することで、腸の運動を活発にし、便を出すようにします。
刺激する部位によって3種類に分かれます。
小腸を刺激する薬 |
ヒマシ油、加香ヒマシ油 |
大腸を刺激する薬 |
アジャストAコーワ錠、プルゼニド錠、ダイオウ末、ラキソベロン内用液、テレミンソフト坐薬など |
直腸を刺激する薬 |
新レシカルボン坐剤、グリセリン浣腸液 |
2.便を柔らかくする薬
薬によって便を柔らかくして、便を出すようにします。
便を柔らかくする方法によって2種類に分かれます。
腸の中の水分を増やす薬 |
酸化マグネシウム錠、アミティーザカプセル、リンゼス錠、モビコール配合内溶剤 |
便の中に水分を取り込む薬 |
ビーマス配合錠、ベンコール配合錠 |
便を出す薬も、効き方、強弱がさまざまあります。
便秘の症状にあった薬を使うことが大事ですね。
便秘を改善して腸をすっきりしましょう
今回の記事では、以下について解説しました。
・便秘には機能性便秘と器質性便秘の2種類のタイプがある。
・高齢者が便秘になりやすい原因は5つある。
・水分を補給する、マッサージを行うなど、普段から実行できる対処法がある。
・便を出す薬は、大きく分けて腸を刺激する薬と便を柔らかくする薬の2種類ある。
便が長時間溜まってしまうと、病気の原因になってしまう可能性もあります。健康な体作りのために、便秘を改善して腸をすっきりさせましょう。
【参照】
(1)日本医事新報社>No.4919>学術特集>特集-学術>(1)慢性便秘症の疫学と診断[特集:ガイドラインに基づく慢性便秘症治療]
(2)e-ヘルスネット > 栄養・食生活 > 病気の予防・治療と食事 > 便秘と食事
(4)ホノミ漢方剤盛堂薬品株式会社 > 耳より健康情報 > 高齢者の便秘
(5) 介護施設で生活する高齢者の排便障害の実態とその要因(Ⅲ.結果>3.排便を促す対処方法)
(6)排泄ケアナビ>排泄ケア 実践編>排便体操(臥位プログラム)
(7)e-ヘルスネット > 栄養・食生活 > 栄養素等のはたらき > 食物繊維の必要性と健康
(8)排便処置方法
(9)第1版 薬がみえるvol.3(p22,25)