「ヒートショック」という言葉を聞いたことはありませんか?
消費者庁の発表によると、高齢者の浴槽内での死亡率が高い水準で維持されています。
また、これから寒くなる冬場にかけて多くなる傾向があります。(1)
高齢者の浴室内の死亡には、「ヒートショック」が関係している場合が多いともされています。
今回は冬場に起こりやすいヒートショックについて、介護現場でも実践できる予防方法をご紹介します。
また、介護現場におけるお薬の管理に関する相談を公式LINEにて受付けております。
【情報配信中】施設・ご自宅へのお薬のお届けや管理を薬局にお願いする方法など
ヒートショックとは
温かい部屋から寒い部屋に移動すると、温度が激しく変化しますよね。激しい温度変化により、血圧も大きく変動し、血管や心臓に関係する健康被害が起こることをヒートショックと言います。(2)
ヒートショックになりやすい方
ヒートショックは誰でも起こる可能性がありますが、ここでは特になりやすい方の特徴について解説します。
65歳以上の高齢者
高齢者になると、血圧を正常に維持する機能が衰えてしまう方が多いです。また、ヒートショックによる死亡数は、65歳以上の高齢者の方に多い傾向があります。※
生活習慣病などの病気の有無に関わらず、65歳以上の高齢者の方はヒートショックになりやすい傾向があるため、注意するようにしましょう。
血圧が変動しやすい方
高血圧など血圧が普段から安定していない方は、温度差による影響を受けやすいため、ヒートショックになりやすいとされています。
糖尿病や脂質異常症の方も、動脈硬化(血管が硬く分厚くなること)により血圧が上がりやすいため注意して下さい。
心臓や脳の病気にかかった経験がある方
心臓や脳の病気にかかった経験がある方も、ヒートショックになりやすいため注意が必要です。例として、脳梗塞(脳の血管が詰まる病気)、脳出血(脳の血管が破れる病気)、狭心症(心臓に十分な酸素を送ることができず胸の痛みが出る病気)などがあります。
また、心臓や脳の病気に現在かかっている方も注意が必要です。
介護現場でも実践できる予防方法
ヒートショックは、普段から予防することができます。
ここでは、介護現場でも実践できる予防方法をご紹介します。(3)
入浴前に血圧の測定を行う
高齢者の方は、血圧の値に異常があっても、自覚症状がなく気付かない場合があります。筆者も在宅業務を経験していた頃、担当していた患者さんの血圧が平常よりも急上昇していたにも関わらず、自覚症状が全くなかったケースがありました。
体調管理の目安にもなるため、入浴前に血圧の測定を行い高い場合は入浴は控えましょう。
入浴後も血圧の測定を行う
入浴後、数時間は血圧に影響が出ると言われています。(4)
入浴後の血圧の変動にも注意が必要なので、入浴後も血圧の測定を行うようにしましょう。
血圧が高い場合はその後の体調の変化に気付けるよう、ご家族や介護する方が側にいて様子を見てあげられることが望ましいです。
脱衣所や浴室は温かくする
高齢者は、血圧を保つ機能が低下している方が多いとされています。そのため、温度差が激しいと、血圧にも大きく影響があります。
脱衣所や浴室が寒いと、温かい部屋との温度差が激しいため、血圧も大きく変化します。そうならないためにも、脱衣所や浴室をあらかじめ温かくしておきましょう。
お湯の温度を高くしない
お湯の温度が42度を超えていると、心臓に負担がかかったり、血圧に影響が出たりします。
熱いお湯に浸かるのが好きな方もいらっしゃるかもしれません。ヒートショックを防ぐためにも、お湯の温度は41度以下にするようにしましょう。(4)
また、手や足など心臓から遠い部位から少しずつ温めてからお湯に浸かることも大事なポイントです。
食後1時間以上開けて入浴する
食べた物を消化するためには、たくさんの血液が腸に必要になります。その際、血圧を維持しようと心拍数が上がりますが、高齢者の場合、十分に心拍数が上がらない場合があります。そのため、食後は血圧が低くなりやすい傾向があります。(5)
血圧が低い状態で入浴すると、ヒートショックを引き起こしてしまう可能性があります。ヒートショックを予防するためにも、食後1時間以上開けて入浴するようにしましょう。
いつ起こるか分からないヒートッショックですが、予防方法を実践するだけでリスクを抑えることができます。
また、ヒートショック予報というサイトもあるので、こちらもぜひ活用してみて下さい。
冬場だけではなく夏場も要注意
今回の記事では、以下について解説しました。
・ヒートショックとは、急な血圧の変動によって心臓や血管に関係する健康被害が起こること。
・ヒートショックになりやすい方は、65歳以上の高齢者、血圧が変動しやすい方、心臓や脳の病気の経験がある方。
・介護現場でも実践することができる予防方法がある。
ヒートショックは寒くなる冬場に多いとされていますが、夏場にも起こる可能性があります。冬だけではなく、1年を通して気を付けるようにしましょう。
自宅で介護されている方は、1人で入浴させることは避けるようにしましょう。もし、1人で入浴をされている場合、頻繁に声をかけるなどの対策をすることが大切です。
また、毎日血圧を測定することは、ヒートショックを防ぐだけでなく、体調を把握するための指標にもなります。血圧を測定した後は、ちゃんと記録しておくことが大事です。血圧を記録する「血圧手帳」は薬局で貰うことができるため、気軽に薬剤師に声をかけて下さい。
【参照】
(1)消費者庁>冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!-自宅の浴槽内での不慮の溺水事故が増えています-
(2)入浴時ヒートショックの危険度判定のための冷温熱刺激装置と血管透過撮影装置の作成と評価
(3)STOP!ヒートショック>ヒートショックを学ぼう!>ゆずおねえさんが教える!>ヒートショックのメカニズム