「知り合いにすすめられた健康食品を試したい」
「健康のために、サプリメントを飲んでみてはどうだろう?」
健康でいてほしい気持ちから、要介護者に健康食品やサプリメントをおすすめしたいと思うことはありませんか?
2019年の厚生労働省の調査結果によると、70~79歳男性の26.5%、女性の31.7%、80歳以上男性の26.0%、女性の28.1%が健康食品を使っています。[1]
この年代の方は、医師から処方された薬を飲んでいることが多いですよね。健康食品を使っても問題がないのか、しっかり確認をとることが必要です。
今回の記事では、介護現場をサポートしている現役薬剤師が、以下を中心に解説します。
- 高齢者はなぜ健康食品やサプリメントを使うのか
- 健康食品やサプリメントにはどんなリスクがあるのか
- 使っている健康食品やサプリメントについて、医師・薬剤師に伝えているか
要介護者へ健康食品やサプリメントを使う前に、参考にしていただけたら嬉しいです。
高齢者が健康食品やサプリメントを使う理由
2021年の健康食品に関する消費者アンケートの調査結果から、健康食品の利用状況について整理してみましょう。[2]
健康食品やサプリメントの入手方法
高齢者は、どのようにして健康食品やサプリメントを購入しているのでしょうか。
(健康食品の購入場所)
男性60代以上 |
女性60代以上 |
通信販売(65.0%) |
通信販売(70.5%) |
ドラッグストア、薬局・薬店(33.5%) |
ドラッグストア、薬局・薬店(35.0%) |
量販店、食品スーパー(7.5%) |
量販店、食品スーパー(9.0%) |
引用:健康食品に関する消費者アンケート調査を実施(2021年)
上の表では、60代以上の男女とも、通信販売を利用した購入が圧倒的に多いのがわかりますね。
通信販売は、医師や薬剤師の目に触れることなく購入できます。
ということは、要介護者や家族が伝えないかぎり、医師・薬剤師は健康食品やサプリメントの利用を知らないまま、薬の処方・調剤することになってしまいます。
健康食品の目的
では、高齢者の方は、どういった目的で健康食品やサプリメントを使用しているのでしょうか。消費者アンケート調査をもとに、確認してみましょう。
(健康食品の摂取目的)
男性60代以上 |
女性60代以上 |
健康維持・増進(60.5%) |
健康維持・増進(59.5%) |
疲労回復・滋養強壮(32.0%) |
免疫力の向上(24.5%) |
免疫力の向上(24.0%) |
疲労回復・滋養強壮(23.0%) |
引用:健康食品に関する消費者アンケート調査を実施(2021年)
2021年はコロナ禍ということもあり、免疫力を向上させたい方が多いようです。
やはり「健康であり続けたい」「もっと健康になりたい」という目的が最も多くなっていますね。
ただし、健康の基本は食事と運動です。
健康食品だけに頼らず、デイサービスでしっかり機能訓練することや、栄養バランスのとれた食事をとることも忘れないようにしたいですね。
健康食品やサプリメントのリスク
健康を維持するための健康食品やサプリメントですから、安心安全に使いたいですよね。
ここでは、国民生活センターや厚生労働省からの注意喚起について紹介します。
消費者トラブル
独立行政法人国民生活センターによると、全国の消費生活センター等への、80歳以上の方からの相談件数が過去最高になっています。[3]
過去にも、「健康食品を1回だけ試すつもりが、翌月も送られてきた」というケースがありました。[4]
通信販売で健康食品やサプリメントを購入する前に、申込書に書かれた契約内容を確認することはもちろん、ぜひ薬剤師にも相談してみてくださいね。
薬との飲み合わせ
厚生労働省は「健康食品の正しい利用法」の中で、次のように注意喚起しています。
- 薬を飲んでいる人は、健康食品を摂取しない
- どうしても健康食品を使うのであれば、医師・薬剤師・アドバイザリースタッフなどに相談する
引用:健康食品の正しい利用法 厚生労働省医薬食品局食品安全部
厚生労働省が注意喚起している理由は、健康食品と薬の飲み合わせが、薬の効果に影響を与えてしまうためです。
飲んでいる薬によって、下のようなリスクが考えられます。[5]
- 薬の効果が弱くなる
- 薬の効果が強くなる
- 副作用が出やすくなる
薬で病状が安定していたのに、健康食品の飲み合わせで薬の効果に影響が出てしまい、体調を崩すのは絶対に避けたいですよね。
事前に薬剤師に相談すると、飲み合わせをチェックできますよ。
体への負担
薬との飲み合わせだけでなく、体そのものへの負担も心配です。
「健康食品は食品だから、薬と違って副作用がない」と思っている方がいるかもしれません。健康食品でも多く摂りすぎたり、体に合わなかったりすれば体調を崩してしまいます。[6]
「健康になりたい」と利用した健康食品で健康を害してしまうのは、とても残念なことです。
健康食品やサプリメントの利用を医師・薬剤師に伝えているか
薬との飲み合わせや体への負担に対して、注意が必要なことがわかりましたね。
では、健康食品やサプリメントを利用していることを医師・薬剤師に伝えているのでしょうか?
東京都生活文化局のアンケートでは、「医師や薬剤師へ、特に伝えようと思わない」と答えた人が42%という結果でした。[7]
様々なリスクがあるにもかかわらず、4割以上の方が医師や薬剤師へ伝えようとしないのは、とても深刻な問題です。
ぜひ、健康食品やサプリメントを使っていることを、医師や薬剤師に伝えましょう。
健康食品やサプリメントも薬剤師に相談しましょう
この記事では以下について解説しました。
- 健康食品の入手方法は通販が多い
- 健康食品の摂取目的は「健康維持や増進」が多い
- 健康食品には3つのリスクがある
①消費者トラブル ②薬との飲み合わせ ③体への負担
- 「医師や薬剤師へ、特に伝えようと思わない」方が42%もいる
「要介護者に健康でいてほしい」と思うあまり、つい健康食品を考えてしまう気持ちもわかります。また、知り合いやご近所の方にすすめられると断りづらいかもしれません。
そんなときは、ぜひ薬剤師に相談してみましょう。
科学的な根拠などをもとに内容成分について調べ、「薬との飲み合わせに問題はないのか」「本当に必要なものか」など専門家目線で確認してくれますよ。
薬だけでなく健康食品やサプリメントについても、「薬剤師に相談してみよう」と思っていただけたら幸いです。
介護現場において、薬のことでお困りの点がありましたら、お問い合わせフォームからご連絡ください。
【参照】
[1]2019年国民生活基礎調査の概況,Ⅲ 世帯員の健康状況,4サプリメントのような健康食品の摂取の状況,厚生労働省
[2]健康食品に関する消費者アンケート調査を実施(2021年),株式会社矢野経済研究所
[3]2019年度にみる60歳以上の消費者トラブル,令和2年9月17日,独立行政法人国民生活センター
[4]独立行政法人国民生活センター > 相談事例 > 身近な消費者トラブルQ&A > 1回だけ試すつもりが、翌月も送られてきた健康食品
[5]愛知県薬剤師会 > 薬事情報センター > 医薬品との併用に注意のいる健康食品
[6]健康食品による健康被害の未然防止と拡大防止に向けて,厚生労働省 日本医師会 国立健康・栄養研究所
[7]平成26年度 第4回インターネット 都政モニターアンケート結果,P14,平成26年11月26日,東京都生活文化局