【薬剤師監修】介護現場でも役立つ、お薬手帳の使い方

【薬剤師監修】介護現場でも役立つ、お薬手帳の使い方

「お薬手帳を持っているけど、あまり使っていない」
「実際どんな時に、お薬手帳が役に立つんだろう?」

70歳以上の84.6%が利用している「お薬手帳」ですが、上手に活用できていますか?[1]
介護現場においても、お薬手帳は情報を共有できる大切なツールの1つです。
今回の記事では、介護現場をサポートしている現役薬剤師が、以下を中心に解説します。

  • お薬手帳はどんな役割をしているのか
  • 介護現場で、お薬手帳をどう活用するべきか
  • 知っておきたいお薬手帳アプリ

家族や職員の方に、「お薬手帳って便利なんだな」「もっと活用してみよう」と思ってもらえたら嬉しいです。

お薬手帳の役割

お薬手帳とはどんなものか、改めて確認していきましょう。

お薬手帳とは

厚生労働省によると、お薬手帳は以下のように説明されています。[2]

  • 処方された医薬品の名前や飲む量、回数、飲み方などを記録する
  • 過去に処方された薬を含め、服用薬の内容を把握し理解するのに役立つ
  • 病院の医師や薬剤師と、薬局の薬剤師との情報の共有ができる
  • 安心安全に服用するため、薬の飲み合わせやアレルギーのチェックを行う
  • 飲んでいる薬を把握することで、医師の指示どおりに薬をしっかり飲める

お薬手帳には、たくさんの役割があるとわかりますね。
特に、高齢者では毎日数種類もの薬を飲む方が多いです。服用薬の情報を管理するには、お薬手帳は欠かせないものとなっています。

お薬手帳はどこで入手できる?

お薬手帳はどこの薬局でも作ってもらえますが、自分でお気に入りの手帳を用意しても構いません。
要介護者が好きな色や、好きなイラストが描かれた手帳を、お薬手帳として使うこともできます。
お孫さんの写真が印刷された、オリジナルの手帳を持っている方もいましたよ。

ほとんどの薬局では、薬の情報が書かれたシールをお薬手帳に貼ってお渡しします。自分自身でオリジナルのお薬手帳を作りたい場合は、シールが貼れる大きさを基準に作成していきましょう。

介護現場での活用方法

介護現場では、お薬手帳をどのように活用できるのか知っておきましょう。

要介護者の様子を記録する

お薬手帳は、薬局がシールを貼って終わりではありません。
家族や職員の方、介護サポーターが、要介護者のお薬について気になったことを自由に書き込んで構わない「連絡ツール」でもあります。

例えば、以下のようなことを介護サポーターが気づいたときには、手帳に記載して薬剤師と連携しましょう。

  •  新しい薬を飲み始めたら、なんとなく体調が悪いようだ
  •  飲み忘れや飲み残しが多く、薬が残ってしまっている

急な受診のときは、忘れずに持参しましょう

要介護者が急に体調を崩し、かかりつけ医とは別の病院を受診する場合には、お薬手帳を忘れずに持参しましょう。
診察する医師にとって、患者がどんな病気を持ち、今までにどんな薬を飲んでいたのかは、とても大切な情報だからです。

また、要介護者が施設に入居している場合、施設内でお薬手帳を預かっていることが多いと思います。
急遽、家族が付き添って通院する場合には、一時的に家族へお薬手帳を返却する必要がありますよね。家族へのお薬手帳の受け渡しを、忘れないように気をつけましょう。

大規模災害時には処方せんの代わりに

東日本大震災のような大規模災害時には、病院の再開まで時間がかかる場合があります。
道路も寸断され、受診できないこともありますよね。
通常は、病院が発行した処方せんがないと、薬局で薬をもらうことができません。

しかし、大規模災害時には、お薬手帳を薬局に持参すれば薬を調剤してもらうことができます。いざという時のために覚えておくと安心です。

災害時に活用する際、注意してもらいたいことがあります。
下記のように病院ごとにお薬手帳を分けて作り、何冊もお薬手帳を持っている方を見たことはありませんか?

(例:お薬手帳 合計3冊)

  • 内科からの薬は、お薬手帳A
  • 眼科からの薬は、お薬手帳B
  • 整形外科の薬は、お薬手帳C

災害時は混乱しているので、3冊もお薬手帳があったのでは正しく情報が伝わりません。
お薬手帳は、どの病院の薬も1冊にまとめて管理するようにしましょう。

知っておきたいお薬手帳アプリ

スマートフォンの普及もあり、最近ではお薬手帳アプリ(電子お薬手帳)を使っている方が増えています。
しかし、要介護者でスマートフォンを持っている方はまだ少ないですよね。
介護現場では、介護者である家族や職員の方々に、お薬手帳アプリをぜひ活用していただきたいです。

紙のお薬手帳との使い分け

施設に入居している場合は、紙のお薬手帳は施設で保管していることが多いと思います。
家族の手元にはお薬手帳がないので、要介護者の薬の情報について、正しく把握できていないかもしれません。

そんな時は、家族が要介護者の薬の情報を管理・把握するために、お薬手帳アプリを使うことがおすすめです。
施設には紙のお薬手帳、家族はお薬手帳アプリ、とそれぞれ管理していくことで、情報の共有に繋がります。
お薬の領収書や説明書(薬情:やくじょう)には、QRコードが印刷されています。このQRコードを読み取るだけで、お薬手帳アプリに薬の情報を取り込むことができますよ。とても便利ですよね。

薬局とのコミュニケーション

お薬手帳アプリには、薬局とコミュニケーションが取れる機能がついている種類もあります。介護をしていてお薬のことを相談したいと思ったら、チャット機能を使ってメッセージのやりとりができますよ。

服用アラーム機能

お薬手帳アプリの機能の1つとして、アラーム機能があります。薬の飲み忘れを防ぐために、アラームを設定しておくと、薬を飲む時間にアラームで教えてくれますよ。
忙しい家族や職員の方の服薬確認に、ぜひおすすめしたい機能です。

お薬手帳アプリの機能は、それぞれのアプリによって違います。介護現場にあったアプリを選びましょう。どれを選べばよいのか迷ったときは、ぜひ薬剤師に聞いてくださいね。

介護現場でもお薬手帳を活用しましょう

この記事では以下について解説しました。

  • お薬手帳には、処方された医薬品の情報や副作用歴を記録するなど重要な役割がある
  • お薬手帳はどこの薬局でも作ってもらえるが、自分で作成もできる
  • 介護現場での活用方法は3つ
    ①要介護者の様子を記録する、②急な受診のときに、③大規模災害時にも安心
  • お薬手帳は、どこの病院の薬も1冊にまとめる
  • 家族や職員が、お薬手帳アプリを活用する方法もある

最近では、介護サポーターや医療サポーター(医師、薬剤師、看護師など)が専用のコミュニケーションツールを使って、要介護者の情報を共有しているケースも増えてきました。専用ツールを導入していない現場では、お薬手帳が大切な情報共有ツールのひとつとなってきます。

介護現場でもお薬手帳を活用して、いろいろなサポーターと情報交換していきましょう。
この記事を読んで、「お薬手帳をもっと活用してみよう」と思ってもらえたら幸いです。

介護現場において、薬のことでお困りの点がありましたら、お問い合わせフォームからご連絡ください。

【参照】

[1]内閣府 > 世論調査 > 令和2年度 > 薬局の利用に関する世論調査 >2調査結果の概要2 >図2
[2]高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部 第8回 医療情報化に関するタスクフォース 資料6:お薬手帳について,3枚目(P2),首相官邸,平成23年2月28日
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