家のお薬箱に大量に薬が残っているということはないでしょうか?
お薬箱に余っている薬は医療・介護の現場では残薬と呼ばれています。
余っている大量のお薬と現在飲まれているお薬を調整することで、お薬代を減らせることもあります。
残薬について理解を深めていき、それが患者さんやご家族にどのように関与するかを知っていただけると嬉しいです。
また、介護現場におけるお薬の管理に関する相談を公式LINEにて受付しております。
【情報配信中】施設・ご自宅へのお薬のお届けや管理を薬局にお願いする方法など
残薬について知ろう
残薬とは
残薬とは病院や薬局でもらった薬の中でご自宅に残ってしまった薬のことを指します。お薬が残ってしまったという言葉から飲み忘れが原因とされるのが一般的ではありますが、不調時に飲む薬の余りも残薬に当てはまります。
残薬が発生する3大事例
薬が余ってしまう事例は大きく3パターンに分類できます。
①飲み忘れによるもの
特に長期間にわたって服用している場合は飲み忘れが起こる可能性も拡がります。
②お薬の変更によるもの
体調や症状の変化により今まで飲んでいたお薬が変更になることがあります。それによって飲まない薬が発生することもあります。
③症状が早く治まり、お薬が不要になってしまう時
お薬の種類によって、また医師からの指示によってはお薬を飲み切る前に治療が終了する場合もあります。その場合はお薬が不要になり余ります。
注目される残薬
残薬という言葉の意味を知っていただけたでしょうか?医療・介護の現場では数年前から残薬は注目されています。どんな観点で注目されているかについて触れていきましょう。
残薬がもたらす問題とは
日本の抱えている社会問題の1つに残薬問題があります。下の図にあるように厚生労働省の資料によると残薬の金額は年間500億円にもなると言われています。(1)
(引用:
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/sankou_4.pdf p.9)
余ったお薬を適切に管理することで、100億円は医療費が節約できるとされています。
個々の余っている薬の量や金額にもよりますが、余った薬を整理し、有効活用することによって医療費の削減にも繋がります。個人にとっても、余っている薬が多いとどの薬を飲むべきなのか分からなくなる危険性もあります。決められたお薬を決められた量飲まないと十分な治療効果が得られないばかりか、治療が長引いてしまうこともあります。
介護現場でよくみられる相談事例
筆者は実際の介護現場でお薬が余っていると相談を受け、患者さんやご家族と一緒にお薬の問題を解決してきました。そのことから残薬が発生する原因を大きく5つに分けてみました。
①保管場所の管理ができていない
お薬をどこにしまったか分からなくなってしまうケースが多いです。また、お薬を患者さんとご家族がそれぞれ管理している場合には複数箇所に薬をしまっていて、あとでまとめて見つかったこともあります。
②飲み忘れや飲む量、回数の間違え
何種類ものお薬を飲んでいると、どのお薬をどの時点で飲めば良いのかが複雑になってきます。間違えを防ぐための対策もありますので、後ほど説明します。
③残薬があることを相談できていない
お薬を飲み忘れてしまい、余っていることを相談できずに溜まってしまうケースも少なくありません。飲み忘れてしまったら怒られるのではないかと不安になるお気持ちは良く分かります。そんな時は目の前の薬剤師に相談してください。橋渡しの役割を果たします。
④自己判断でお薬の飲む回数を減らしてしまう
1日に何回も飲むのが大変だったり、自覚症状が無いからといって自己判断で飲む回数を減らしてしまう事例もあります。医師は指示通りにお薬を飲んだものとして薬の処方を決めるので、指示通りに服用できるようにご家族からのサポートも大切です。
⑤服用時間と生活リズムのズレ
個人個人生活リズムは異なります。お昼ご飯の時間が日によって違うためお昼の薬を飲み忘れてしまうケースや夕食後から睡眠までの時間が短く、就寝前に飲む薬を忘れてしまうケースもあります。お薬の中には飲む時間帯が必ず決められているものもありますが、生活リズムによって飲むタイミングを調整できるものもあります。医師や薬剤師に気軽に相談しましょう。
残薬への対応方法
残薬についての理解が深まってきたのではないでしょうか?最後に余っているお薬を減らすためのおすすめの方法と余らなくするための方法を紹介します。
薬局への相談
「どの薬が〇錠余っている」のように余ってしまったお薬の数を薬剤師に伝えてください。薬局に相談していただければ、その日や次回分の日数調整を提案することができます。忘れてしまう時はお薬手帳にメモすることも有効です。
服用方法の工夫
一包化という工夫も残薬解消に一役買います。お薬の量が増えてくるにつれて飲み方が複雑になります。一包化することにより朝・昼・夕など飲むタイミング毎にお薬のパックができます。朝は朝の袋を1つ飲むだけで解決します。また、一包化したものを再度、作り直すこともできます。こちらについても薬剤師に気軽に相談してください。介護現場で役立つ「一包化」の活用方法
ポリファーマシーとは
昨今、残薬と関連して注目されている言葉にポリファーマシーという概念があります。ポリファーマシーは、服用するお薬の数が多いことではなく、それに関連してお薬の副作用リスクの増加、間違った服用等の問題につながる状態であると定義されています(2)
次回の記事でこの概念と残薬を絡めて、より安心かつ安全にお薬を飲めるような取り組みを紹介します。
まとめ
今回の記事を通して残薬についての知識を深めていただけたでしょうか?
お薬が余ってしまうことをゼロにするのは難しいかもしれません。余ってしまったお薬を活用する方法があること、またそれを行うことでお薬代が安くなる可能性があることを理解していただけると幸いです。
薬剤師は患者さんやご家族の味方です。お気軽に相談していただき、一緒に手を取り合ってより良い医療を受けられるようになると嬉しいです。
【参照】
1:患者のための薬局ビジョン