【薬剤師監修】介護現場で起こってしまう落薬の原因と予防対策について解説

【薬剤師監修】介護現場で起こってしまう落薬の原因と予防対策について解説

とある介護サービス事業所の事故等発生状況報告書によると、事故区分別に占める割合が1番多いのは「誤薬」というデータがあります(1)
誤薬には、謝った量を飲んでしまう、間違った時間に飲んでしまったなどさまざまありますが、その中の1つに「落薬」があります。
落薬は誤薬の中でも、件数が多い傾向にあります。
今回は、介護現場で起こってしまう落薬の原因と予防対策について解説します。

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落薬とは

落薬とは、薬をしっかりと飲み込むまでに、何らかの原因で薬が落ちてしまうことです。
薬が落ちてしまうと、高齢者が薬を飲むことができなくなりますよね。その結果、症状が悪化してしまったり、体調を崩してしまったりという問題が起こってしまいます。

落薬が起こってしまう3つの原因

介護現場で落薬が起こってしまう原因は、主に3つあります。

服薬拒否

服薬拒否とは、薬を飲むことを拒否することです。
薬を飲む必要がないと思っている方、薬に対してマイナスのイメージを持っている方、薬の味が好きではないなど、さまざまな方がいらっしゃいます。このように、薬に対して良くないイメージを持たれていると、薬を飲みたくないため、手で払いのけたり、口から吐き出すなどの服薬拒否により、落薬が起こってしまいます。

薬袋から薬を出すときに落としてしまう

袋から何かを出す時、うっかりと落としてしまったという経験は誰もが体験したことがありますよね。薬も同様で、うっかりと落としてしまうことがあります。
また、コロコロと転がりやすい形をした薬を飲んでいたり、飲む薬の種類が多かったりすると、袋から出すときに薬を落としてしまう可能性が高くなります。

薬を飲み込むまで確認していない

薬を口に入れたから、しっかり飲んでいると思ってしまいますよね。実は、口に入れたと思っていても、薬が口からこぼれ落ちてしまうケースもあります。このように、薬を飲み込むまで確認していないことも、落薬を引き起こしてしまう可能性があります。
落薬が起こってしまう原因は、薬を飲む側、薬を飲むのを介助する側の両方に潜んでいます。落薬が起こってしまった場合、何が原因で起こってしまったのかしっかりと考えることが大切です。

落薬が起こってしまった場合の対処方法

どんなに気を付けていても、落薬が起こってしまうことはあります。
落薬が起こってしまった場合、正しい対処を行うことがとても大切です。
ここでは、落薬が起こってしまった場合の対処方法をご紹介します。

落薬してしまった薬は破棄する

「普段から清掃しているから落ちても大丈夫」なんて考えている方もいるかもしれません。しかし、落薬してしまった薬は破棄するようにしましょう。
また、落薬した薬を、水やアルコールで消毒して使用するのも止めましょう。水やアルコールによって薬に悪影響を与えてしまう場合があります。
ただし、薬の種類によって、通常のゴミに破棄することができない薬(医療用麻薬など)もあります。通常のゴミに破棄して問題ないか疑問に思った場合は、薬剤師に相談しましょう。

医療サポーターに報告をする

落薬が起こった場合、医療サポーターに報告することで、どうしたら良いか正しい対処を指示してくれます。
対処方法がわからない時は速やかに医療サポーターに相談しましょう。
落薬が起こってしまった場合、または、後日落薬に気付いた場合は焦らずに対処しましょう。
また、落薬をしてしまった人を責めたりしないようにしましょう。

落薬を予防するための4つの方法

落薬は、誰もが起こしてしまう可能性があります。
そのため、落薬を起こさないために予防することがとても大切です。
ここでは、落薬を予防するための4つの方法をご紹介します。

薬が落ちないような容器やお盆を準備する

薬を袋から取り出す時、薬が落ちないような容器やお盆を準備してから行うようにしましょう。薬が転がっても落ちないような少し深めの容器がおすすめです。また、とりこぼしのない薬杯(やくはい:折り紙シート)というものもあるので、参考にしてみてください。(2)

配薬する前に複数人でチェックを行う

配薬する前、薬がちゃんと揃っているか確認を行うようにしましょう。その時、1人で行うのではなく、2人以上で確認を行うことがおすすめです。1人では気付かない小さなミスが発見できることがあります。
また、薬の錠数だけではなく、他の人の薬と間違えていないか、飲むタイミングは間違えていないかなど、1つ1つ丁寧に確認を行うことで、落薬以外の誤薬を防ぐことができます。

薬剤師に相談する

薬を飲むのを嫌がったり、飲みにくさを感じたりなど、薬について困ったことがあれば薬剤師に相談しましょう。
薬剤師に相談することで、薬を飲みやすくする方法を提案してもらえたり、担当の医師に薬の提案を行ったりすることができます。
また、以前の記事の中で薬を飲みやすくする方法をいくつかご紹介しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。

1錠ずつ薬を飲むようにする

薬を飲ませてあげる時は、1錠ずつ薬を飲ませてあげるようにしましょう。1度にたくさんの薬を飲むと、口からこぼれ落ちてしまう可能性があります。また、1錠ずつ薬を飲むことで、しっかり薬を飲んでいるか確認も行うことができます。
さらに、薬をのませてあげた後、ベッドの上や下、床に薬が落ちていないか確認できると良いですね。

落薬をゼロにすることは難しいかもしれません。しかし、普段から予防を行うことでゼロに近づけることができます。また、落薬以外の誤薬を防ぐことにも繋がります。

落薬を防いで介護現場での誤薬を減らしましょう

今回の記事では、以下について解説しました。

・落薬とは、薬を飲み込むまでに、何らかの原因で薬が落ちてしまうこと
・落薬が起こってしまう原因は主に3つある
・落薬が起こってしまった場合の対処方法
・落薬を予防する4つの方法

落薬は1人で防ぐことはとても難しいですよね。
医師や看護師や薬剤師などの医療サポーターが連携することで、落薬のリスクを減らすこともできます。
落薬が多くて悩んでいる方は、医療サポーターに相談してみてください。

【参照】

(1)令和2年度  介護サービス事業者集団指導資料

(2)とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成

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