【薬剤師監修】介護現場でも知っておきたい嚥下障害による薬の飲み込みづらさを改善する方法

【薬剤師監修】介護現場でも知っておきたい嚥下障害による薬の飲み込みづらさを改善する方法

食べ物だけではなく、薬の飲み込みづらさを感じている高齢者の方は多いのではないでしょうか?
以前の記事では、食事や飲み物にとろみをつけることで改善できることをご紹介させていただきました。実は、食事や飲み物にとろみをつける以外にも、薬の飲み込みづらさを解決する方法があります。
今回の記事では、嚥下障害による薬の飲み込みづらさを改善する方法をご紹介します。

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嚥下障害とは

まず「嚥下」とは、食べ物や飲み物を口から胃まで運ぶ運動のことを言います。
この運動が何らかの原因によって低下すると、食べ物や飲み物が飲み込みづらくなってしまいます。
これを「嚥下障害」と言います。(1)

嚥下障害が起こる3つの原因

嚥下障害が起こる原因は、大きく分けると3つあります。(2)

年齢による機能の衰え

歳をとると、さまざまな機能が低下してしまいます。
例えば、食べ物や飲み物を飲み込む時に使われる筋肉が衰えてしまうと、上手に飲み込むことが出来なくなってしまいます。
また、空気の通り道である気管に、食べ物が入らないようにする役割をするフタの機能も低下しているため、誤嚥性肺炎を起こしてしまう可能性もあります。

病気による影響

病気によって神経や筋肉に異常が起こってしまうと、嚥下障害を起こしてしまう可能性があります。
神経や筋肉に異常を起こしてしまう病気の例としては、パーキンソン病、脳梗塞、脳出血、認知症、脳腫瘍などがあります。
うつ病などの精神疾患も、食欲が低下したり、唾液を飲み込む時に喉に違和感を感じたりするため、嚥下障害の原因に繋がるともされています。

また、病気の治療のために服用している薬によって嚥下障害を起こしてしまう場合もあります。原因となる薬の例としては、リスペリドン(リスパダール錠)、ハロペリドール(セレネース錠)、クエチアピン(セロクエル錠)、アルプラゾラム(ソラナックス錠)、ジアゼパム(セルシン錠)などがあります。

構造上の変化があった場合

食べ物や飲み物を飲み込む時に必要な食道、咽頭などの器官が、構造上変化していると、嚥下障害を起こしてしまいます。
例えば、何らかの病気を治療するために、舌を切除したり、食道の一部を切除したりすると、食べ物を上手に飲み込むことが出来なくなってしまいます。

また、高齢者の方は、虫歯や歯周病などによって歯が抜け落ちている方もいらっしゃいます。嚙み合わせがしっかり出来ないような状態も、嚥下障害の原因になってしまいます。

薬の飲み込みづらさを改善する7つの方法

薬の飲み込みづらさは、ちょっとした工夫や、医療従事者に相談することで改善することができます。
ここでは、薬の飲み込みづらさを改善する7つの方法をご紹介します。

薬の形を変更する

薬にはさまざまな形があり、患者さんが飲み込みやすいように変更できる場合があります。
例えばOD錠という水分に溶けやすいものに変更すると、お菓子のラムネのように口の中で錠剤が溶けるので、通常の錠剤よりも飲みやすくすることができます。
また、徐放錠という効果が長く続くタイプに変更することで、薬を飲む回数を減らすことができます。
カプセル型は、喉に詰まらせてしまうこともあるので、その場合は錠剤に変更したり、カプセルの中から薬を出す(脱カプセル)という方法が取れる場合もあります。
認知症の方は嚥下障害を起こす方が多いため、皮膚に貼るタイプの薬、液体タイプの薬に変更できる場合もあります。

錠剤を粉砕する(出来る薬と出来ない薬がある)

錠剤よりも粉状の方が飲み込みやすい場合、薬の形を粉状に変更できる場合もあります。
薬によっては粉状の薬がない場合があるので、その時は、錠剤を粉砕することで粉状にすることができます。(ただし、錠剤を粉砕する場合、薬の性質から出来ない薬もあります)

簡易懸濁法を使う(出来る薬と出来ない薬がある)

錠剤の飲み込みに不安を感じる場合は、簡易懸濁法によって薬の飲み込みずらさを改善する方法もあります。
簡易懸濁法とは、薬を約55度のお湯に入れて懸濁させたものを投与する方法です。(3)

簡易懸濁法のやり方

  1. 薬が間違っていないかしっかり確認をし、カップに入れる
  2. 懸濁できるカップやコップに55度のぬるま湯を入れ、スプーンなどを使いしっかりかき混ぜる(55度のぬるま湯は、水と熱湯を1:2の割り合いで混ぜると作ることができます)
  3. 10分程度放置する
  4. お薬が混ざっている液を飲む(カップの側面に、薬が残っていないか確認をする。残っている場合は、再度55度のぬるま湯を少量足して、飲み残しのないようにして下さい)

懸濁した液が飲み込みづらい場合、とろみを付けることも可能です。
また、簡易懸濁法は、薬によって出来る薬と出来ない薬があるので、自分の判断で行わないようにしましょう。

オブラートに包む

オブラートは、口に貼りついてしまうため、かえって薬が飲みにくくなるというイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、オブラートを正しく使うことで、薬が喉を通りやすくすることができます。
実は、オブラートは、水分を十分に含むとゼリー状になるという性質があります。この性質を利用することで、薬の飲み込みづらさを改善することができます。

オブラートの使い方

  1. 水を入れたコップを用意する
  2. オブラートの中心に薬をのせる(薬の量が多い場合は、数回に分けるようにしましょう)
  3. オブラートの端を寄せて、薬がオブラートから出ないようにしっかりとねじる(ねじるのが苦手な方は、袋型のオブラートの使用がおすすめです)
  4. 水が入ったコップの中にオブラートを入れる
  5. オブラートがゼリー状になったら、口の中に入れて飲み込む

ただし、苦味健胃薬と言う胃腸薬は、薬の苦味によって胃の運動を活発にさせる薬のため、オブラートを使うと薬の効果が十分に発揮されない可能性があります。

食事に混ぜる(食事の影響を受ける薬剤は不可)

薬を食事に混ぜて飲ませてあげることも、薬の飲みづらさを改善する方法の1つです。
食事に混ぜる例として、お粥の中に錠剤を入れて飲ませてあげる方法があります。ゼリーやプリンに錠剤を埋め込んで飲ませてあげるのもおすすめです。
だたし、薬によって食事の影響を受けてしまう薬や、食事に混ぜることによって薬の味が食事に混ざってしまい、逆に飲みにくくなってしまう場合もあります。
食事に混ぜて飲ませてあげる場合は、必ず薬剤師に相談するようにしましょう。

とろみをつける

とろみ調整食品を使ってとろみををつけることも、薬の飲み込みづらさを改善する方法の一つです。
こちらの記事に詳しい内容を記載しています。

飲み込みやすい姿勢で飲む

薬を飲むときの姿勢を変えるだけで、薬の飲み込みづらさを改善することができます。
座って薬を飲む場合は、椅子に深く腰かけ、背筋を伸ばし、顎を引いて少し前かがみの姿勢で飲むようにしましょう。(4)
ベッドに寝ているまま薬を飲ませてあげる場合は、30〜45度の間でベッドをリクライニングしてあげるのがおすすめです。角度はあくまでも目安なので、患者さんと相談して飲みやすい角度に設定してあげるようにしましょう。(5)
また、嚥下障害のある方が飲みやすいように設計されたコップもあるので、そのコップを使うこともおすすめです。

薬の飲み込みづらさがあると、薬を飲むことを拒否するという問題も起こってしまいます。
そうならないためにも、薬の飲み込みづらさを改善することはとても大切なことです。

医療サポーターの連携がとても大切

嚥下障害の重症度によって対策の方法が変わるので、患者さんの症状に合った飲み方を選択することがとても大切です。
患者さんの嚥下障害の評価を行う医師、薬の飲み方のアドバイスや、薬 の形の変更の提案を行う薬剤師、実際に患者さんに薬を飲ませてあげる介護職員や看護師など、患者さんを様々な方向からサポートしている医療サポーターの連携が必要不可欠です。

患者さんが薬を飲み込みづらそうと感じたら、近くの医療サポーターに相談しましょう。

【参照】
(1)嚥下障害
(2)高齢者における病態生理と対応―高齢者の嚥下障害の病態とその対応― 
(3)日本服薬支援研究会>簡易懸濁法とは

(4)嚥下をさせない食事ケアのコツ
(5)嚥下障害例における摂食時姿勢と食物形態の違いによる口腔通過時間の検討一安全性および患者の自立度アップを目指して一

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