【薬剤師監修】介護現場の負担を軽くする「薬の管理法」

【薬剤師監修】介護現場の負担を軽くする「薬の管理法」

「薬の管理は、手間がかかって大変......」
「薬が多くて、整理が追いつかない」

日々のケアで忙しい中、薬の管理も必要となると、負担が増えて大変ですよね。
さらに、「薬のミスはあってはならない」ので、薬の管理は責任重大です。

今回の記事では、介護現場をサポートしている現役薬剤師が、以下を中心に解説します。

  • 介護現場で負担となっている薬の管理
  • 薬剤師がお手伝いできる、サポート内容

「薬剤師も介護現場をいろいろお手伝いできますよ」ということを、知っていただけたら嬉しいです。

介護現場で薬を管理する際の、5つの負担とは

まず、介護現場での薬の管理法について、整理してみましょう。
介護現場では、薬を受け取ってから服薬後まで、いくつもの業務がありますよね。
ここでは、「こんな場面で負担になっているのでは」と想定される、5つの負担について考えていきます。

負担① 薬の受け取り

薬を受け取るためには、本人に付き添っての通院が必要です。病院やクリニックで処方せんを受け取り、今度は薬局へ。
たくさんの薬が処方されていたり一包化されていたり、時間がかかる場合もありますよね。
代理で薬を受け取る場合には、本人に代わり、薬剤師から大切な薬に関する説明を聞くことになります。
通院からの時間を考えると、付き添いはかなり負担になっているはずです。

負担② 受け取った薬の整理

ようやく薬を受け取り帰宅すると、次は受け取った薬を整理しなければなりませんよね。
ここできちんと整理しておくと、間違った薬を渡してしまう可能性が低くなります。薬袋から薬を取り出し、「明日の朝の分、昼の分・・・」と分けて、お薬カレンダーや配薬ボックスに入れて整理していきます。これも大変で、時間がかかる作業のひとつです。

負担③ 配薬

いよいよ、薬を飲む時間が迫ってきました。食事を準備する際、飲む分の薬をお薬カレンダーなどから取り出し、食卓に置きます。この時間が、間違った薬を渡していないか最終確認できるタイミングです。
食事の準備や配膳と重なる上に、薬のミスは許されないという大変な状況ですよね。

負担④ 服薬確認

食事の後(薬によっては食前も)に、薬を落とさずに飲めたか、吐き出したりむせたりしていないか、薬を飲むこと自体を嫌がっていないか様子を観察します。
しっかり服薬できているのかを確認するために、飲み終えて空になった薬の袋をチェックする施設もあるようです。
介護施設や高齢者住宅の場合は、1人の職員がたくさんの要介護者を見る必要があり、目が離せませんね。

負担⑤ 薬の副作用チェック

服薬の後は、日常生活の中でいつもと違う様子がないかを観察します。ふらつき、ぼんやりしているなどの変化は、薬の副作用かもしれないからです。家族や職員の方は、中々気を抜けない状況が続きますよね。

薬剤師による介護現場のサポート

介護現場の5つの負担に対して、薬剤師はどんなサポートをしているのでしょうか。

今回は、介護保険の居宅療養管理指導(きょたくりょうようかんりしどう)について紹介します。[1] 
漢字ばかりで難しく感じてしまいますよね?でも、1度漢字をしっかり見てみてください。
「居宅(自宅)」で「療養(治療)」している方に、お薬の「管理」について「指導」しますよと言い換えると、理解しやすくなりませんか?

この居宅療養管理指導のポイントを、わかりやすく解説していきます。

薬を生活拠点にお届け

通常は、薬局に薬を取りに行き、薬剤師から薬を受け取ります。
しかし、こちらのサポートでは、薬剤師が薬を持って、自宅や施設などの生活拠点にうかがいます。
薬局に薬を取りに行く負担が減り、空いた時間は他サポート業務に使えますよね。しかも、単なる配達ではありません。
要介護者に合わせて一包化をするなど、飲みやすく工夫した薬をお持ちします。

服用時点ごとに薬をセット

薬剤師が、一包化してある薬を服用するタイミングごとに分けて、お薬カレンダーや配薬ボックスにセットします。
薬についてよく知っている薬剤師がセットすることで、家族や職員の方の手間が省けますし、ミスを防ぐことにもつながりますよね。

自宅や施設などで薬の説明や相談も

薬剤師が自宅などを訪問し、どんな働きをする薬なのか、どんな場合に注意が必要なのか説明します。
薬剤師が、家族や職員の方に1番知ってほしい内容は、副作用の初期症状です。
初期に気づけられれば、ひどい症状にならずに済みますよね。

また、以下のことも、ぜひ気軽に薬剤師に相談してみてくださいね。

薬局と比べて、自宅などではじっくりと話す環境を作りやすいですよね。
疑問に思ったことを、気軽に相談出来るのは安心につながります。

居宅療養管理指導にかかる費用

居宅療養管理指導は、費用がかかります。
介護保険が使えるので、1割や2割の負担です。
自宅なのか、大人数の施設なのかによって違いますが、2021年4月の介護報酬では以下のようになります。[2]

(1割負担) 薬局薬剤師が 月1回 訪問する場合

341~517円

(1割負担) 薬局薬剤師が 月2回 訪問する場合

682~1,034円

介護保険内のサービスなので、あらかじめケアマネジャーに相談する必要があります。
薬剤師からケアマネジャーに連絡することもできるので、お気軽にご相談ください。

薬剤師と一緒に、負担を軽減しましょう!

今回の記事では、薬剤師による介護現場のサポートについて紹介しました。

  • 介護現場の薬に関する負担は5つ

①薬の受け取り ②薬の整理 ③配薬 ④服薬確認 ⑤副作用チェック

  • 薬剤師によるサポートは3つ

①薬のお届け ②薬のセット ③薬の説明や相談

  • 居宅療養管理指導の費用は、介護保険が使える

薬の管理は、すべて家族や職員の方が行う必要はありません。
介護現場の負担を少しでも減らすため、薬剤師を活用する方法があります。
「餅は餅屋」ということわざがありますが、薬のことはぜひ薬剤師に相談してみてくださいね。

この記事を読んで、「薬のことを、薬剤師に相談してみようかな」と思ってもらえたら幸いです。

【参照】

[1]指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について,p29-30,厚生労働省
[2]令和3年度介護報酬改定における改定事項について,p172,厚生労働省

この記事のタイトルとURLをコピーする
採用情報