【薬剤師監修】介護現場で知っておきたい「認知症のタイプ」

【薬剤師監修】介護現場で知っておきたい「認知症のタイプ」

「家族の会話についていけなくなった...」
「最近、物をなくすことが多い」

介護現場で、このような「認知症かもしれない」と疑う場面はありませんか?

認知症は、2025年には約700万人、65歳以上の高齢者の5人に1人が発症すると見込まれています。[1]
この数字を見ると、介護現場と認知症は、切っても切れない関係だとわかりますよね。
認知症についての知識をつけることは、近い将来、介護現場にきっと役に立つでしょう。

  • 認知症とは
  • 認知症にはどんなタイプがあるか
  • 早めに認知症だと気づくには

今回の記事では、介護現場をサポートしている現役薬剤師の筆者が、上記の3点を中心に解説します。
介護現場で避けては通れない認知症について、知るきっかけになれば嬉しいです。

認知症とは

まず、認知症とはどんなものか確認していきましょう。
脳は、私たちの体をコントロールする大切な臓器です。
脳が働かないと、日常活動に支障が出てしまいますよね。

認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞がしんでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヶ月以上継続)をいいます。
引用:認知症施策の総合的な推進について 令和元年6月20日 厚生労働省老健局

認知症は病気の名前ではなく、特有の症状があり生活に支障が出ている状態のことを言います。
では、どのような特有の症状があるのでしょうか?

認知症にはどんな症状がある?

認知症の症状は、大きく2つに分けることができます。

  • 認知症の中心的な症状(中核症状)
  • 認知症であることで起こる症状(周辺症状)

では、順番に見ていきましょう。

認知症の中心的な症状(中核症状)

認知症では、脳の細胞が減ってしまい、脳自体の働きが低下すると下の症状が出てきます。

認知症であることで起こる症状(周辺症状)

中核症状によって、本人は不安になったり混乱したりします。
すると、下のような周辺症状につながってくるのです。

認知症にはどんなタイプがあるの?

認知症は、引き起こす原因によって、いろいろな種類に分類されています。

アルツハイマー型認知症

認知症の中で、一番多いのがアルツハイマー型認知症です。[2]
アルツハイマーという言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。

脳の中にアミロイドβというタンパク質が溜まってしまい、正常な脳の神経を壊して脳を萎縮させることが原因のひとつと考えられています。
ただ、はっきりとした原因はわかっていません。
どの認知症の症状も出る可能性がありますが、物忘れが多いことで気づくケースが多いようです。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症に次いで多く、認知症の20%を占めています。[3]
レビー小体とは、神経細胞にできる特殊なタンパク質です。このレビー小体が大脳皮質という場所に集まってしまい、神経細胞が壊れて減少することで、認知症の症状が起こります。
レビー小体型認知症の初期では、物忘れよりも、幻視や動きが遅く筋肉が固くなるパーキンソン病のような症状が多いのが特徴です。

脳血管性認知症

脳血管性認知症も、アルツハイマーに次いで多い認知症です。
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など、脳の血管の病気が原因で起こります。
脳の血管の病気により、脳の細胞に酸素や栄養が届かなくなるため、細胞が壊れてしまうのです。

脳血管性認知症は、どの認知症の症状でも起こる可能性があります。
また、脳の血管の病気が、脳のどの場所で起きたかによって、症状は様々です。

その他の認知症

その他にも、さまざまな認知症のタイプがあります。[4]

また、飲んでいる薬によって、認知症の症状が出る場合もあります。
たとえば、安定剤の服用によって注意力が低下し、長期間飲み続けると認知症のリスクになることが報告されています。気になる症状があれば、飲んでいる薬が書かれたお薬手帳を見せた上で、薬剤師に相談してみましょう。

早めに認知症と気づくために

介護現場では、本人のちょっとした異変や「いつもと違う」行動に気づくことが最も重要です。
どんな小さなことでも、認知症の早期発見につながるかもしれません。

ただし、家族や介護職員の方も忙しいので、ずっと見ているわけにもいきませんよね。
食事や着替え、家族や介護職員と会話をするときなど、タイミングを決めてチェックすることから始めてみましょう。
いつもと違う様子に気づいたら、医師や看護師、薬剤師などの医療サポーターに相談してくださいね。

周りにいるサポーターに相談しましょう

この記事では、認知症のタイプについて紹介しました。

  • 認知症とは、いろいろな原因で脳の働きが悪くなり、生活に支障が出ている状態
  • 認知症には、アルツハイマー型、レビー小体型、脳血管性認知症などがある
  • 家族や介護職員が、いつもと違う様子に早く気づくことが重要

認知症の高齢者は、これからますます増えていくでしょう。
認知症をしっかり理解し、温かい目で見守ることが大切です。

認知症の知識と理解を持った「認知症サポーター」が全国で養成されていて、地域全体で本人や家族をサポートしてくれます。[5]
また介護現場には、医療サポーターや介護サポーターもいます。
介護現場で不安にならないよう、周りにいるサポーターに相談しましょう。

今回の記事が、介護現場の不安を少しでも和らげられたら嬉しいです。

【参照】

[1]内閣府  >  内閣府の政策  >  共生社会政策トップ  >  高齢社会対策  >  高齢社会白書  >  平成28年版高齢社会白書(概要版)  >  3 高齢者の健康・福祉
[2]厚生労働省> 統計情報・白書 > 白書、年次報告書 > 平成28年版厚生労働白書-人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える- > 本文掲載図表(一覧/バックデータ) > 図表1-1-15 血管性及び詳細不明の認知症、アルツハイマー病の患者数の推移
[3]大日本住友製薬 >  病気の知識  知っておきたいレビー小体型認知症のこと  レビー小体型認知症とは
[4]一般社団法人 日本神経学会 > ガイドライン  > 認知症疾患診療ガイドライン2017
[5]厚生労働省 > 政策について > 分野別の政策一覧 > 福祉・介護 > 介護・高齢者福祉 > 認知症施策 > 認知症サポーター

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